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第16景 赤煉瓦の「旧岩手銀行本店」

いいとこよりみち発見伝2015年8月号 Vol.501

赤煉瓦の「旧岩手銀行本店」

今も利用されている城下町・盛岡市の歴史的建造物

岩手・盛岡市
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▲辰野金吾、葛西萬司設計の旧岩手銀行本店。国重要文化財

 城下町・盛岡市の中心部には官庁街や民間会社のビルが立ち並んでいますが、近代の歴史的建築物も残存し、今も利用されています。

 例えば、内丸にある岩手県公会堂は、1927(昭和2)年にできたものですが、東京・日比谷公会堂の設計者である佐藤功一が設計したものです。その形からも日比谷公会堂と通じるものがあります。また、官庁街が集中している内丸から、南北に流れる中津川に架かる「中ノ橋」を渡ると、「中ノ橋通」界隈に出ます。この地区は明治から大正期にかけて金融街として栄えました。

 その代表的な建物が1911(明治44)年に竣工した旧岩手銀行本店(旧盛岡銀行本店)です。赤煉瓦造りに白い花崗岩のラインを入れた西洋風の建物は、その様式を見ても東京駅(丸の内側)と深いかかわりがあります。設計したのは建築家・辰野金吾と盛岡市出身の葛西萬司で、のちに東京駅を手掛けます。構造は煉瓦造り2階建て(一部3階)。屋根は緑のドーム型の銅板葺きで、ルネッサンス風の厳格で美しい形をしています。今も建築当時の姿を完全な形で残し、1994年に国の重要文化財に指定されました。

 旧盛岡銀行が1934(昭和9)年の金融恐慌のあおりを受けて倒産。その後、岩手銀行の前身である岩手殖産銀行時代に、赤煉瓦の「赤」は「赤字」をイメージさせることから外壁を白く塗ったと言われ、今でもその痕跡を確認することができます。

 2013年まで岩手銀行中ノ橋支店として使用され、建物内部はロビーと営業室が吹き抜け構造で、2階に回廊をめぐらし、天井に石膏モチーフを施すなど豪華なつくりとなっています。

 その旧岩手銀行本店のすぐそばに、旧第九十銀行本店(国重要文化財)が建っています。この建物も洋風建築で、盛岡市出身の司法省技師であった横濱勉が設計し1910年に竣工。現在は「もりおか啄木・賢治青春館」として活用され、盛岡市が生んだ石川啄木、宮沢賢治の青春時代の足跡を紹介する観光のスポットとして親しまれています。市の中心部を流れる中津川沿いを散策しながら、石垣が美しい盛岡城跡公園、古い商家や土蔵などをめぐると、城下町の面影がしのばれます。

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▲佐藤功一設計の岩手公会堂
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▲横濱勉設計の旧第九十銀行。国重要文化財(現もりおか啄木・賢治青春館)