「看護職員の労働実態アンケート結果」に
基づき厚生労働省要請・記者会見を実施
【厚生労働省要請】
自治労連は11月13日(金)の午前、2014年11月から2015年1月にかけて4年ぶりに実施した「看護職員の労働実態アンケート」の最終報告書の完成を受けて、今回のアンケート結果から浮き彫りになった自治体病院職場の過酷な労働実態や、アンケートに協力してくれた看護職員の声を届けるために厚生労働省要請と記者会見を実施しました。
要請には、自治労連から高柳副委員長、篠原中執、医療部会から池尾議長、増田副議長、大河常任幹事、地方からは東京、大阪が参加しました。厚生労働省からは医政局、労働基準局、雇用均等家庭局から4名が対応しました。
冒頭、高柳副委員長が要請内容(下記)を含む挨拶を行い、続いて、増田副議長からアンケート結果の報告が行われました。今回のアンケート結果の報告を受けて厚生労働省から要請に対する回答がされました。要請項目と厚生労働省との主なやりとりは以下の通りです。
〇厚生労働省の5局長通知、6局長通知の発出など、この間の努力には敬意を表するが、職場では欠員状態が常態化しており、たとえ人員が増えたとしても医療の高度化によって、勤務実態が改善される状況にはなっていない。週2回夜勤をすると休みはただ寝ているだけ。
〇若い人たちは給料だけでなく、休みが欲しいと考えている。休みがとれない職場のままでは離職は止められない。A病院では67名の新人が入職したが、すでに10名が退職しているという実態がある。
〇公立病院は他の病院から様々な事情を抱えた患者さんの受け皿となっており、医療介護総合促進法など現場は不安でいっぱい。
〇看護師としての経験年数は長くても、退職と就職を繰り返すことにより、その病院における勤続年数が短いため賃金が低いなどの問題がある。また、病院独自の仕事の仕方があるが、それに慣れない場合に残念ながら同僚からのパワハラなども発生しており、職場のギスギス感が患者さんに悪影響を及ぼすことも考えられる。看護職場が長く働き続けられる環境にないことが問題だ。
以上のように、職場のリアルの事態を出して、看護職場の改善の一層の努力を訴えました。
【要請項目】
1.ILO第149号看護職員条約に鑑み、「夜勤を含むことを基本とする看護職員」については、労働時間を大幅に短縮し、「1勤務8時間以下」、「週32時間(当面、36時間)以下」、「勤務間隔は最低16時間以上」、「『公休日』は24時間以上」とすること。また、「二交代制」勤務は、看護職員には長時間夜勤を強制し、身体的・精神的に犠牲を強いるとともに、患者さんには看護の質の低下につながる問題であり、法的規制に反するものであり、原則として実施しないこと。
2.夜勤体制については、職務の特殊性から「1看護単位(病棟)で夜勤3人以上、月(暦月)6日以内」とすること。また、国土交通省が定めた「高速バス運行基準」を下回らないよう看護職員についても連続夜勤や勤務間隔の基準を改善した法的規制をおこなうこと。
3.年次有給休暇の完全消化などを保障するために、実効性ある措置を実施すること。
4.厳しい看護職場の労働実態とくらべ賃金等の条件が良くないことが看護師の定着に悪影響を及ぼす大きな要因のひとつとなっています。安心して看護業務に専念でき、専門性にふさわしい賃金・夜勤(看護)手当に改善できるよう必要な措置を講じること。
5.医療現場でのハラスメントに対する実効ある対策を講じること。
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【記者会見】
11月13日(金)の午後、厚生労働省記者クラブにおいて「看護職員の労働実態アンケート」の最終報告書の内容について記者会見を実施しました。記者会見には毎日新聞、朝日新聞、日本経済新聞など5社が参加しました。
高柳副委員長はあいさつで、自治労連が2014年11月から2015年1月にかけて4年ぶりに実施した「看護職員の労働実態アンケート」の概略を紹介し、特徴点として、前回の2010年調査からの間に看護職・医療職の質の向上のために厚生労働省から5局長通知・6局長通知が出され、日本看護協会もガイドラインを出すなど、行政や各団体の改善の努力があったが、アンケート結果からは看護職場の過酷な労働実態が改善されるどころかむしろ悪化していることが浮き彫りになったと述べました。
増田副議長からアンケート結果の報告が行われ、就業状態については年齢が高くても勤続年数が短い人が多く存在し、看護職場が厳しく退職と再就職が繰り返されること。夜勤の勤務形態については3交代勤務から12時間・16時間の長時間2交代勤務が増加していること。労働実態については仕事量が増え続けサービス残業が増加し、20時間未満の超過勤務を請求しない人が約8割にもなること。有給休暇の取得は約7割が10日以下しか取得できていないこと。労働環境については上司によるパワハラが増加しており、人員不足などによる職場でのストレスなどが大きく影響していると考えられること。健康状態については7割を超える人が非常に疲れる、翌日・休日にも疲れが回復しないと回答している。健康で働き続けるためには7割が「人員の拡充」を挙げていること。仕事に対する思いでは7割がやりがいを感じながらも、その8割以上が十分な看護ができていないと考えている。その理由に5割が人員不足を挙げていること。8割の人が仕事を辞めたいと思い、その理由の多くは人員不足に起因することなどが報告されました。
参加した記者からアンケート結果の内容に対する評価などについて質問が出されました。
池尾議長をはじめ参加者から現場の実態を明らかにしながら質問に対する回答が行われ、勤務時間については、よりまし論の結果として長時間夜勤が選択され、その結果として医療現場でリスクが増加していることなどを明らかにしました。自治労連は、人員不足の解消と勤務条件の改善を求めて引き続き運動を強めていくことを表明し記者会見を終了しました。