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地域医療と公立病院の充実を求める医療関係府省・団体要請・懇談行動

  1月25日(月)、前日の「いのちと地域を守る学習・意思統一集会」で学び、交流した全国各地の取り組みや職場の課題を持ち寄り、医療関係府省・団体への要請・懇談行動に取り組みました。要請・懇談の概要は下記の通りです。 

【総務省要請】

 自治労連から13名が参加し、総務省自治財政局から3名が対応しました。冒頭、福島副委員長が、自治体病院の役割が重要であり、医療構想などの新しい取り組みに対し、地域医療を守って行くために、率直な意見交換をお願いしたいと述べ、協議に入りました。

総務大臣あて要請書

1.自治体病院の事業に対する地方交付税措置を減額せず拡充をはかること。また、自治体病院の運営に反映されるようその趣旨をふまえ、自治体の一般会計から病院会計に繰出しを行うよう助言すること。

2.「医療構想」にともなう病床数の削減を自治体病院に押し付ける「新たな公立病院改革プラン」の策定を強制しないこと。また、自治体病院の統廃合、民間移譲などの「再編・ネットワーク化」や、自治体の地域医療への責任体制を後退させる「経営形態の変更」などの「地域医療切り捨て」を行わず、住民要求に基づく医療体制の整備・拡充を行うことを促進するための財政措置を行うこと。

3.医療現場では、医師・看護師不足は引き続き深刻な状況にあり、地域医療を確保する上からも早急に緊急対策を講じること。

(1)2011年の「看護師等の『雇用の質』の向上」2013年の「医療分野の『雇用の質』向上」の通知に基づき、自治体病院でもこれらの「向上対策」を進めること。

(2)被災地・へき地医療をはじめ地域医療を確保・充実するため、医師・看護師・コメディカルスタッフなど医療従事者の確保・定着対策を抜本的に強化すること。

(3)医師不足が著しい地域で、必要医師数が確保されるまでの間、一定年限の勤務の義務化を行うなど、効果的な医師派遣システムを構築すること。

(4)看護師の確保・定着がはかれるよう支援すること。

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 自治体病院への交付税等については、三重、北海道の参加者から、市立病院が赤字で一般会計からの持ち出しで自治体の財政も厳しい実態。運営交付金の基準が許可病床から稼働病床になると、ある自治体病院では2000万円近い減額となると訴え、病院への交付税の拡充を求めました。

 医療構想と公立病院改革については、千葉や東京の参加者から、医療構想のしくみ上の問題や地域医療崩壊につながる危惧など、基本的問題点を指摘。その上で、地域の医療関係者の声を紹介し、連携は大事だが「再編・統合」批判が強いとし、押し付けを止めるよう求めました。大阪の参加者は、維新政治で住吉市民病院と府立病院の統廃合に関わり、地元住民の批判の声を紹介し、府知事が一方的に住吉市民病院の廃止を厚労省に申請したことを批判しました。

医師・看護師確保等については、静岡の参加者から、看護師確保の上でも、賃金改善が必要。看護職が40代から技師、事務など他職種と比べ低くなる。専門職にふさわしい待遇が必要だと訴えました。また、5局長通知など夜勤等の改善通知が出されているが現場は依然として改善が進んでいない。長時間2交代勤務が広がる中で、アンケートからも医療事故への不安が多くなっている。など、現場の実態を訴えました。

最後に、福島副委員長は、政府の「地方創生」との関連でも地域医療を守ることが重要だ。今日聞いていただいた実態を受け、さらなる改善の努力をお願いしたいと述べて、しめくくりました。

 

【厚生労働省要請】

 自治労連からは17名が参加し、厚生労働省からは医政局、労働基準局からは4名が対応しました。

 初めに高柳副委員長が「医療従事者の勤務改善をすることが地域医療を守るためにも必要である」とあいさつ。

 

厚生労働大臣あて要請書

1.厚労省が通知した「(看護師等・2011年)および(医療分野・2013年)の雇用の質の改善」を促進し、関係機関への周知・徹底をはかり、現場で実効あるものとすること。

2.ILO第149号看護職員条約に鑑み、「夜勤を含むことを基本とする看護職員」については、労働時間を大幅に短縮し、「1勤務8時間以下」、「週32時間(当面、36時間)以下」、「勤務間隔は16時間以上」、「『公休日』は24時間以上」とすること。

3.夜勤体制については、職務の特殊性から「1看護単位(病棟)で夜勤3人以上、月(暦月)6日以内」とすること。また、長時間勤務の「二交代制」は、身体的・精神的に犠牲を強いるとともに、患者さんには看護の質の低下につながる問題であり、同時に法的規制に反するものであり、原則として実施しないこと。さらに、看護職員等の連続夜勤や勤務間隔の規制をおこない、安全な体制確保するため、国土交通省が定めた「高速バス運行基準」を下回らない基準を厚労省として策定すること。

4.看護師の配置基準については、抜本的に改善を行い、安全・安心の医療提供ができる人員体制を確保すること。そのためにも離職防止の対策を一層強化し、看護師が働きつづけられる職場になるよう環境整備を促進すること。

 

その後、要請項目に対して厚生労働省から回答がされました。

〇「雇用の質の改善、周知・徹底」では、管理者向けセミナーの開催や勤務改善など医療機関が引き続き周知を行っていく。

〇「労働時間の短縮」については、医療法改正により医療機関の管理者が医療従事者の勤務環境の改善に取り組むこととする努力義務規定が創設され、自主的にPDCAサイクルにより計画的に勤務環境改善を取り組む医療勤務環境改善マネジメントシステムを活用することや各都道府県にある医療勤務環境改善支援センターが支援していく。

〇「1看護単位(病棟)で夜勤3人以上、月(暦月)6日以内にすること」については、看護師の夜勤負担の軽減などについて政策で具体的に対策がとれるか考えていきたいと回答。

また、医療部会副議長から「看護職員の労働実態アンケート」の結果説明をおこない、その中で違法残業の実態・問題は、管理者には浸透しているが、現場管理者である師長に労働基準法などの研修受講を義務付けることを求めました。

 千葉、大阪、北海道、三重、愛知、静岡などの参加者から、「有給休暇が取得できないこと」「サービス残業が多いこと」「外来は当直体制であるが患者対応している時間は多く、日勤から約20時間働かなければならないことがあることや14日連続勤務であることもあること」「妊婦看護職員が師長に夜勤免除の相談をするが認められなかったことで退職してしまったこと」などの現場の現状について報告がありました。

最後に大阪市の住吉市民病院問題について、行政が勝手に廃院予定であると厚労省に廃止の申請を行ったが、地域に根ざしている病院であり地域住民のいのちを守る大切な病院であること。存続の必要性について訴えました。

 

【全国自治体病院協議会との懇談】

「地域医療構想」は、それぞれの地域で地域医療のあるべき姿について議論を!

 自治労連から8名が参加し、全国自治体病院協議会からは、事務局長と経営調査部長の2名が対応しました。

 はじめに、自治労連から松繁副委員長が、「住民の安全・安心の守り手」である公立病院の拡充が必要であること、また、安保法制のもとで住民生活、地域医療を守れるか危惧すると表明し、医療部会の池尾議長の進行により、意見交換をしました。

 全自病協からは『地域医療構想』について、「それぞれ地域で『地域医療調整会議』を開催し、地域医療のあるべき姿を語ることが大事。公立病院からも積極的に参加し、自治体病院の役割を議論してほしい。」「『地域医療構想』をコンサルタント会社に委託するやり方は適当でない」と批判しました。また、「国が独法をつくって公立病院を徐々に減らしていく中では、処遇、経営、サービスも、今の経営形態に固執していては守れない」と話しました。新しい『専門医制度』については、「国民の命がどうなるのかとの懸念を抱いている。全医療団体と一緒に大きな運動を起こさなければならない」と話しました。消費税増税については、今でも750床の規模で年間約6~8億円の損税。年間100万円の黒字を出すのがやっとの自治体病院ではやっていけない」と問題を指摘しました。

 看護師確保、処遇改善の必要性について、池尾議長は、看護職員労働実態アンケートを紹介しながら、27.9%の看護師が鎮痛剤を飲みながら仕事にあたっている、仕事にやりがいを感じながらも辞めたいという人が8割にのぼる等の実態を示し労働環境を一緒に改善していきましょうと呼びかけました。

【日本看護協会との懇談】

長時間夜勤・サービス残業改善など、看護の質の向上にむけて懇談を重ねていくことを確認

 自治労連からは16名が参加し、日本看護協会からは、坂本すが会長をはじめ、副会長、常任理事、労働政策部が応対しました。

image011 懇談にあたり高柳副委員長は「今日は、全国から医療現場で働く組合員が参加しているので、生の声を聴いていただきたい。看護の向上、労働条件改善など、ご一緒にできることは進めていきたい」とあいさつしました。

 医療部会議長が自治労連の看護師アンケート結果を紹介した後、各参加者が発言しました。日本看護サミット緊急アピール「診療報酬における看護職員の月平均夜勤時間72時間要件の堅持(宣言)」を評価するが、さらなる踏み込んだ64時間要件になるよう頑張ってほしい。長時間夜勤を緩和するため16時間を止めて12時間勤務体制を行った職場でも「良し悪しがある」と聞いている。サービス残業が当たり前のような風潮がある。ある妊婦が夜勤免除をお願いしたら「免除はできない。深夜勤務を少なくし準夜勤務を増やした」と看護師長の対応で、やめていった看護師もいるなどの声を届けました。

 日本看護協会からは、「2交代・3交代夜勤のどちらを推奨しているわけではないが、長時間夜勤が駄目であることを明確に意思表示してきた。サービス残業などは問題外。ましてや、妊婦に夜勤を強制するなどは許されない。平均夜勤時間64時間は理想だが、その前に72時間を守らさなければ次はないので、協会としては様々な戦略を考えながら対応している。今年度は賃金の改善にもとりくむ。組合ももっと頑張ってほしい」と叱咤激励されました。

また、自治労連から共通する課題での共同を申し出たことに対し、「看護協会として戦略を練りながらやっていく。しかし、今日いただいたアンケートなど、情報は知らせてほしい」と表明があり、今後も懇談をしていくことを確認して懇談を終えました。

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