プール事故から5年-ふじみ野市市職労が第5回安全な公共施設を考える市民集会開催
2006年7月の埼玉県ふじみ野市の市営「大井プール」事故から5年目にあたる7月31日、ふじみ野市職労は事故の再発防止を求めて「第5回安全な公共施設を考える市民集会」を開催しました。
はじめに、ふじみ野市職労の後藤委員長が「シンドラーのエレベーター事故をきっかけに、私たちの運動を通じて、消費者庁の『事故調査のあり方に関する検討会』のとりまとめが今年5月に出されるなど、事故の再発防止にむけた動きがでてきている。本集会は、事故調査の専門家を招いて5年間の運動の到達点として開催したい」とあいさつしました。
続いて、鶴田執行委員が、労働組合の立場から事故原因について、①プールの構造上の問題、②職員定数削減、研修予算なし、市町村合併で施設が倍増などプールの維持管理上の問題、③契約違反の再委託など受託業者のモラルハザードの3点にわたって報告しました。
専門家の立場から報告
小西義昭さん(公益社団法人日本技術士会子どもの安全研究グループ)は「工学的視点からみた大井プール事故の調査報告」を報告。同グループは今年7月20日、ふじみ野市に対し、エンジニアリングの知見を活用して事故を防ぎたいと「流水プールの吸いこまれ事故を工学的に検証し事故防止を検討した報告書」を提出しています。小西さんは防護柵や防護柵の穴あけ加工などの不備について詳細に説明し、「人の管理に依存した安全ではなく、設計段階で安全を確保すべきだ。もっと専門家の知見を活用してほしい」と結びました。
高本孝一さん(日本乗員組合連絡会議事故対策委員)は、「事故調査と安全―国民の安全に資する事故調査、その基本的な考え方」を報告。高本さんは1997年、日航機が三重県上空で乱高下し乗客乗員14人が死傷した事故機の機長。「事故調査報告書が証拠として採用されたことにより、業務上過失致死傷罪に問われ、二審で無罪が確定するまで10年を要した。再発防止につながる、背後の原因にさかのぼる調査が必要だ」と述べました。
消費者庁消費者安全課の松田耕治さんは、消費者庁がとりまとめた「事故調査機関の在り方に関する検討会のとりまとめについて」説明し、7月8日に改定された「消費者基本計画」に、平成24年度中に事故調査を行う体制の具体化をめざすことが盛り込まれたと報告しました。
独立した、強力な権限をもつ事故調査機関の設置を
パネルディスカッションでは、拝師徳彦弁護士(新しい事故調査機関実現ネット事務局長)がコーディネーターをつとめ、ジャーナリストの鶴岡憲一さんと高本さんが発言。鶴岡さんは、元読売新聞編集委員で、1985年の日航機の御巣鷹山墜落事故の取材を通じて、経済産業省など産業振興にかかる省庁が安全や情報公開に関して熱心でないことを痛感したと発言。両氏は、「事故の際には刑事捜査が優先され、押収した証拠品は司法当局に独占され、もっぱら犯罪の有無を特定することを目的としている。再発防止のために、調査と捜査は分離すべき」と指摘。国民の安全を守ることを第一の目的とし、産業振興省庁から独立した、強力な権限をもつ事故調査機関の必要性を訴えました。