国家公務員制度改革推進本部は4月5日、「国家公務員制度改革基本法に基づく公務員制度改革の『全体像』」(以下、「全体像」)の決定を行った。
「全体像」の概要は、①非現業国家公務員に協約締結権を付与。人事院勧告制度と人事院を廃止。争議権は団体交渉や国民の理解の状況を勘案し先延ばし、②労使で自律的に人事・給与制度の見直しに取り組めるよう、人事行政に責任を持つ使用者機関として職員との交渉にあたる公務員庁を設置、③人事行政の公正の確保等を担う第三者機関として、内閣府に人事公正委員会(仮称)を設置、④幹部公務員人事を一元管理する内閣人事局の設置、⑤地方公務員の労働基本権はその特性等を踏まえ、国家公務員の労使関係制度に係る措置との整合性をもって、速やかに検討、⑥その他、採用形態から定年延長などを含む多岐にわたったものとなっている。
これにより、「人事院勧告制度」が廃止され、賃金や労働条件が労使間の交渉によって決定する仕組みへと前進する。あわせて不当労働行為の禁止・救済措置や、中央労働委員会による労使紛争の調整システムが新たに設けられる。
戦後間もなく一方的に奪われた、公務員の労働基本権の一部である「協約締結権」が回復されることは、私たちの60年余のたたかいの到達点として確認できるものである。
しかし、今回の「全体像」決定の背景に、地域主権改革や道州制の導入など、政府や財界が企図する国家改造に従順に従う公務員づくりの狙いや、人事院勧告制度を廃止してさらなる公務員総人件費削減を押し付ける意図があり、「基本的人権としての労働基本権の回復」という私たちの願いから見れば、様々な問題点が残されていることも明らかである。
自治労連は全労連公務員制度改革闘争本部に結集し、推進本部事務局との協議に参加、「全体像」に対する意見反映を行ってきたが、最終段階でも、①協約締結できる労働組合を中央労働委員会の認証を受けたものに限定、②管理運営事項を「交渉できない事項」とする、③団体交渉の空洞化につながりかねない「内閣の事前承認制」、④人事公正委員会を内閣府に置かず、政治的中立を担保する第三者機関にすべき、⑤不当労働行為に対する実質的な救済の担保が不明確、⑥使用者による給与実態調査のあり方などの問題点が残されている。今後、通常国会に向け、法案化作業が本格化するもとで、こうした問題点に関わって、全労連公務員制度改革闘争本部との協議を継続して行い、是正をするよう求めていくものである。
また、地方公務員の制度についても、国家公務員制度改革に遅れることなく整備をはかることが求められる。その際、「全体像」に見られる問題点の是正はもちろんのこと、地方公務員制度ではより幅広い労使関係を持ち、それが地方自治と地域住民の命と暮らしを守る実質的な役割を果たしてきたという到達点を踏まえ、地方公務員制度の確立にむけ、総務省が労働組合との協議を早期かつ十分尽くすよう要請する。
東日本大震災は、「構造改革」のもと「財政効率一辺倒」の「小さな政府・自治体」が進められる一方で、国民の命と暮らしを守るという公務公共業務の本来の役割を放置してきた政治の現状を明らかにした。一方で、被災地を中心に、自らも被災しながら、地域住民の救援と復興に向けた昼夜を分かたぬ公務公共労働者の奮闘が現在も続いている。
自治労連は、改めて「財政効率一辺倒」の「構造改革の政治」を見直すとともに、被災された住民の命と暮らしを立て直し、地域経済の復興をすすめるために、その中軸となる公務公共業務の拡充と、公務員労働者の労働基本権の全面的な回復を求めるたたかいを一体のものとしてすすめる。
春闘後段の取り組みとして、すべての地方組織・単組で東日本大震災の被災地の救援と復興に向けた支援の取り組みを広げるとともに、春闘要求に基づく交渉の配置を14日を節目に強化しよう。大震災とも関わって「安心・安全、福祉のまちづくり」が一大争点となっている東京都知事選をはじめ、いっせい地方選挙の終盤の取り組みを広げよう。
夏季闘争に向け、職場段階から、住民の命と暮らし、安全安心を守るにふさわしい職場体制を求め、予算人員闘争を強化しよう。そしてこうした要求の前進とつないで公務員労働者の労働基本権回復を求める署名運動を、組織拡大と合わせて確信を持ってすすめよう。
すべての地方組織・単組が、ただちに攻勢的に、こうしたたたかいを全国で広げることを呼びかける。