1 政府は、1月末に「幼保一体化を含む新たな次世代育成支援のための包括的・一元的なシステムの構築」を検討している検討会議ワーキングチームに、政府案を提示しました。この政府案は、現行制度で認められている、保護者の労働又は疾病等によって保育に欠ける場合の「保育を受ける権利」を、子どもから奪うものです。とりわけ保護者の経済状況が困難であり、障害があって手厚い保育が必要な子どもほど、保育が受けられなくなる制度です。具体的には、第一に、市町村の保育実施義務を廃止して、保育所、幼稚園、(新設)こども園(以下、こども園等)と保護者の直接契約とし、保育を必要とする子どもと保護者が利用できない場合でも、市町村は調整等さえすればよいとされます。第二に、こども園等の運営費への直接的な財政支出・財政保障を原則廃止し、保護者への個人給付(保育料補助)に変えるものです。その結果、こども園等の収入は保育料と保育料補助のみとなり、安定的な運営が損なわれるだけでなく、過疎地域ではこども園等の設置そのものが困難になります。第三に、保育料について保育料補助の算定基礎となる「公定価格」は決めるものの、付加サービスの対価としての上乗せ保育料には上限を設けません。その結果、保育サービスは「お金次第」に変わり、子どもはゼロ歳から貧困と格差を押し付けられます。第四に、3歳未満児はすべて登園時刻と降園時刻はバラバラで、保育内容は時間単位の細切れの預かり保育と化し、3歳以上児についても4時間程度の「教育」を除いて時間単位となります。第五に、一定の基準さえ満たせば民間企業等も自由に参入できる「指定制」に変えることによって、「参入も自由、撤退も自由」へと変貌させるものです。
2 いま地域では、「育児休暇が終わるのに保育所が見つからない」「保育料が高くて生活できない」という親の悲鳴、「お昼寝のふとんを敷く場所もない」「トイレの前に子どもの列」という保育現場の悲鳴が渦巻いています。政府がまず解決しなければならないことは、現行制度に基づいて、第一に、緊急に保育所を新増設し、待機児童を解消すること、第二に子ども子育て予算を大幅増額し、施設基準を改善し、職員の処遇を改善し、豊かな保育を実現することです。ところが「待機児童解消は疑問も」(日経新聞1月25日)などと報道されているように、新システムは保育所の新増設にも、待機児童解消にもつながりません。「百害あって一利なし」の新システムは断じて容認できません。
3 政府案の詳細が明らかになるにつれて、ワーキングチーム会合でも、次々と問題点が指摘されています。昨年12月に「子ども・子育て新システム実現集会」まで開き、新システムの推進役になっている連合の代表が、今頃になって「ひとり親、園の選抜から漏れやすい障がい児や低所得者等には機会の平等が保障されない」などと言い出しています(1月27日基本制度ワーキングチーム会合)。世論と運動が、政府や推進勢力を追い詰めていることは事実です。政府は、1月末に法律案大綱を決定する予定でしたが、今なお実行していません。しかし3月中旬に関連法案3法(①子ども・子育て支援法、②こども園法、③一括法)を国会に提案するとしていることから、政府が閣議決定を強行するおそれは多分にあります。他方、国民のなかに批判がいっそう広がるならば、閣議決定できない状況に追い込む可能性もあります。
4 以上の情勢をふまえ、自治労連は、現在開会中の通常国会で法制化させないことはもちろんのこと、政府案として閣議決定させない、国会に法律案を提案させないために、ただちに総力を挙げてたたかうことを呼びかけます。 具体的には、①2月中旬より「新システム反対」を明確にした新署名(国会請願署名)にいっせいに取り組むこと、②当面、3月9日の国会要請行動に結集、③各地域で一斉宣伝行動(基準日2月26日)を準備すること、④各地域での議会での意見書採択、首長への要請、地元国会議員への要請、などの行動です。 自治労連に結集するすべての労働者が、子どもの幸せ、保育の充実を願うすべての住民、団体と手を結び、保育を市場化する「こども子育て新システム」の導入を断固阻止するために、総決起しようではありませんか。