1 総務省は、指定管理者制度の運用について、地方自治体に対して、2010年12月28日付けで、「様々な取組がなされる中で、留意すべき点も明らかになってきたことから‥改めて制度の適切な運用に努められるよう‥助言します」とする通知を発出しました。「技術的助言」の内容は、自治労連がこれまで繰り返し、総務大臣に要請していた事項に沿ったものとなっています。しかも通知を報道機関に情報提供し、かつ総務省ホームページのトップに掲載する異例の取扱いをおこないました。自治労連は、総務省の今回の措置を高く評価するとともに、政府に対して、改めて指定管理者制度の廃止を含む抜本的な見直しを要請するものです。また地方自治体に対し、これを機に「公の施設」の管理運営のあり方を地方自治の本旨に立ち返って全面的に見直し、改善することを要請するものです。
*総務省ホームページ http://www.soumu.go.jp/main_content/000096783.pdf。
2 指定管理者制度は、自公政権が「官から民へ」の新自由主義政策のもとで、「公の施設」の管理運営を営利企業に任せられるように、2003年6月に地方自治法を改正して導入した制度です。自治労連は、独自に指定管理者制度の破たん事例、問題事例を調査し、第一に企業参入によって突然の撤退や経営破たんなど施設の管理運営の安定性を犠牲にするだけでなく、公有財産の独占的利用で金儲けをし、公正性、公平性を犠牲にすること、第二にコスト削減が優先され、指定期間及び公募原則によって労働者の有期雇用化と低賃金化がすすみ、自治体自らがワーキングプアを生み出すこと、専門性が破壊され、施設の安全性や公共サービスの質の低下をもたらすことなどを明かにしてきました。そして研究者、弁護士等の協力を得たシンポジウム(2009年5月)などを開催し政策を提言するとともに、歴代の総務大臣に対して、繰り返し廃止を含む抜本的見直しを要請してきました。
3 総務省は、自治労連等の指摘に応えて、これまでも「指定管理者制度の運用上の留意事項」(2008年)、「公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果」に基づく事務連絡「指定管理者制度の運用について」(2009年)等、一定の見直しをおこなってきました。地方自治体のなかにも、指定管理者制度から直営に戻し、公益法人や地域自治組織を非公募で選定するなど、改善の努力もみられます。しかし地方自治体の多くは、指定管理者制度の対象施設をひろげ、管理料(委託料)の削減をすすめています。その結果、静岡県立草薙体育館での死亡事故(2009年)、同県立青年の家(浜名湖)でのボート転覆死亡事故(2010年)など、安全管理上の瑕疵による利用者の死亡事故が相次ぎ、問題は深刻化しています。その背景には、国が「三位一体改革」等によって地方財政を緊迫化させたこと、集中改革プラン等によって職員定数削減と民営化を押し付けてきたことがあり、他方、地方自治体も「民でできるものは民で」などと、新自由主義的な政策を推進してきたことがあります。
4 今回の総務省の措置は、経費削減第一の運用により惹起している深刻な問題を改善させる契機になるものですが、指定管理者制度そのもののもつ問題点を見直すことには至っていません。いま政府に求められる抜本的な見直しは、たとえば第一に「公の施設」の個別業務ではなく包括的な管理から原則として企業を対象外とする措置、第二に従事する労働者の非正規化を食い止め、正規雇用と専門性を確保するための実効ある制度の創設等です。とくに後者は、有期雇用化が、単に経費削減だけでなく、指定期間を定められていることを理由になされている以上、別途、雇用継承制度を設け、また公契約法等を整備しなければ、根本的解決が図られません。
5 いま地方自治体に求められることは、そもそも指定管理者制度を適用することが、地方自治法及び労働法令に照らして適当かどうかを、個々の施設ごとに検証し、直営に戻すことを含めた抜本的な改善を図ることです。指定管理者制度の適用は「公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるとき」と限定され、住民サービスの向上が条件であり、経費削減や定数管理を主目的とする制度適用は認められません。また指定管理者が労働者を雇用し施設を管理運営する際に地方自治体から独立性が確保されなければ、労働者派遣法に抵触します。現に違法派遣の状態であるならば、直ちに直営に戻し、当該の労働者に直接雇用を申し出なければなりません。地方自治体が、憲法及び地方自治法に基づいて、住民福祉を増進するという本来の役割を発揮し、「公の施設」の充実を図ることを強く求めるものです。