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戸籍業務の民間委託は「労働者派遣法違反」

足立区戸籍裁判、区民が実質勝利の判決

 足立区が民間事業者との間で締結した戸籍窓口業務の委託契約をめぐり、地方自治法、戸籍法、労働者派遣法等違反を前提とした違法な公金支出だとして、区民が区長に対して委託料を区に返還するよう求めた住民訴訟で、東京地方裁判所は3月1日、原告が請求した「区が支出した公金の返還」は認めなかったものの、「業務委託契約については労働者派遣法違反」と認定するなど住民の訴えの多くを認め、実質的に原告勝利の判決を言い渡しました。

 裁判で区側は、同区が富士ゼロックスとの間で締結した契約は請負契約だとして、契約書に盛り込まれている区職員に対して質問する「疑義照会」を正当なものと主張していました。区側はまた、訴訟の前提として行われた住民監査請求が委託契約のみを対象としたもので不適法だと主張していました。裁判所は住民監査請求が各支出命令および支出を対象としていたことは明白だと退けています。

 判決は、委託契約で定められていない事項が起きた場合に、委託先従業員が区職員に照会し、区職員が記述の補足や訂正などを指示していたと認定。東京労働局が2014年7月に労働者派遣法違反だとして、区に是正指導を行なった事実を示し、委託契約が労働者派遣法違反だと認定しました。

東京自治労連、足立区職労は、戸籍事務をはじめとした窓口業務の民間委託を許さないたたかいを進めるとともに、区民とともに裁判勝利に向けて、たたかいを進めてきました。

 原告側代理人で自治労連弁護団の尾林芳匡弁護士は「民間委託を不当とする裁判で、契約の偽装請負が認められた判例はなく画期的だ」と指摘。また、石井一禎弁護士は「戸籍だけでなくさまざまな専門分野に広がる民間委託の歯止めになる判決だ」と判決内容を評価しました。

 今回の住民運動と裁判の意義について、弁護団は以下の見解を発表しました。

 「東京法務局や東京労働局による是正指導や裁判闘争により、当初の本件委託業務の範囲は変更・縮小され、直営に戻った業務がいくつかありました。具体的には、戸籍異動や入力・移記入力等の業務、戸籍の移動に伴う住民異動の受付・入力作業の業務の一部、委任状による証明書等の発行申請や第三者請求の場合の受付、入力、発行、照合業務、不交付の場合の案内については委託業務から外れて、区の職員が行う直営にもどりました。このように、重要な業務が直営に戻ったことの事実が、戸籍等の民間委託が失敗に終わったことの証であるといえます。

 また、いったんは不開示とされた月次報告書も、その主要部分が開示されるに至り、民間委託によるミスやトラブルを住民が監視する途を開きました。」

 

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