シリーズ29 いちから学ぶ仕事と権利 国会の答弁・決議いかしより良い賃金・労働条件を
会計年度任用職員制度
「フルタイム勤務を15分削って短時間勤務とする」「月例給を引き下げて一時金を支給する、年間支給額は変わらない」という提案が全国各地で出されています。法改正の趣旨を再確認します。
任用の適正化・待遇改善が法改正の目的
「任用の適正化、そして処遇の改善につながるように」「民間部門に係る同一労働同一賃金ガイドライン案におけるいわゆる賞与についての正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消という方向性にも合致している」
これは、会計年度任用職員制度の導入などを可能にした地方公務員法等の一部改正を2017年4月13日の参議院総務委員会で審議した際の高市早苗総務大臣(当時)の答弁の一部です。
しかし、近畿地方のある自治体では、「勤務条件は1日7時間45分のフルタイムで、年間248日勤務です。ただし、1カ月だけ17日勤務の月を設けます、だから短時間勤務なので退職金は出ません」とする会計年度任用職員保育士の募集がされています。
正規職員が年間に出勤する日数は、242日程度です。正規職員より多く出勤させておきながら、特定の月だけ勤務日数を削って退職金を逃れるという、国会での議論を軽視した脱法的雇用であり、許されません。
当該の単組や地方組織が、この募集の撤回かフルタイム任用に切り替えるよう交渉しています。
適正な勤務条件の確保は国・自治体の責任
多くの自治体で、一時金を出す代わりに毎月の賃金を下げるという提案が出されています。この動きに対して、総務省は「職務給の原則、給与決定の原則に沿って、しっかりと会計年度任用職員の処遇も確保されるべきだ」と10月の自治労連との交渉で答えています。
また、フルタイム勤務だった臨時・非常勤職員の仕事を勤務時間15分削減して「短時間勤務」とする提案があちこちで出されています。
この動きに対して、東海地方のある県では「従来フルタイム任用していた職について、今回の改正を機に7時間30分と15分削るのは不適切である」と県内の市町村等へ助言しています。
地方公務員法等の一部改正の際に付された附帯決議の遵守は国と地方自治体の責任です。この附帯決議を活用して、不利益変更を許さず、より良い賃金・労働条件の確保をめざしましょう。
参議院 総務委員会(2017年4月13日決議)
地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律案に対する附帯決議<抜粋>
政府は、本法施行に当たり、地方公務員の任用、勤務条件並びに福祉及び利益の保護等の適正を確保するため、次の事項についてその実現に努めるべきである。<中略>
三、現行の臨時的任用職員及び非常勤職員から会計年度任用職員への移行に当たっては、不利益が生じることなく適正な勤務条件の確保が行われなければならない。そのために地方公共団体に対して適切な助言を行うとともに、制度改正により必要となる財源についてはその確保に努めること。また、各地方公共団体において休暇制度の整備及び育児休業等に係る条例の整備が確実に行われるよう、地方公共団体に対して適切な助言を行うこと。<後略>
高市早苗総務大臣(当時) ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。