シリーズ37 いちから学ぶ仕事と権利 健康で文化的な生活が維持できる賃金を労働者に
生計費原則
▲1カ月に必要な生活費はどっち?
コロナ危機のもとでも労働者の生活を守るため、すべての労働者の賃金引き上げが重要になっています。賃金決定の根拠となる生計費について学びます。
生計費は給与決定の重要な要素
自治体労働者の給与に関する根本基準は、地方公務員法第24条2項に「職員の給与は、生計費ならびに国および他の地方公共団体の職員ならびに民間事業の従業者の給与、その他の事情を考慮して定められなければならない」と規定しています。
この要素のうち、生計費は最初に位置づけられており、もっとも重視されなければなりません。
現実とかけ離れた人事院の「標準生計費」
人事院は毎年の勧告にあたって「標準生計費」を算出し、生計費原則を満たしていることを証明しようとしています。
しかし、標準生計費は「全国消費実態調査」や「家計調査」のデータの「平均値」ではなく、より低くなる「並数(なみすう)階層による値※」を用い、「費目別・世帯人員別生計費換算乗数」を乗じて算出しています。また、階層や「換算乗数」の算出方法といった重要な部分を人事院は明らかにしておらず、ブラックボックスとなっています。
実際に2019年調査の標準生計費は月額約12万円(1人世帯)と、現実の生活と大きくかけ離れています。
全国どこでもだれでも時給1500円が必要
一方で、全労連を中心に全国各地で「最低生計費調査」が行われており、各地の調査結果を見ると、1カ月に必要な生活費は税・社会保険料込みで約22~26万円(25歳単身世帯)が必要で、地方による差はほとんどありません。
最低生計費を月150時間労働で換算すると時給1500~1600円必要ですが、10月からの全国の最低賃金の加重平均は、時給902円と大変低い水準です。今こそ最低賃金の大幅底上げと全国一律制度実現が重要です。公務と民間を問わず、すべての労働者の賃金を引き上げる運動に結集していきましょう。
※「並数階層による値」とは
「並数」とはモードや最頻(さいひん)値ともいい、例えば食料費の支出額を一定の幅(3000円刻みや5000円刻みなど)で最も回答が多かった幅を「並数階層」といい、この値を用います。家庭によって支出の重点費目は異なるため、並数階層は平均値より低く出る傾向があります。