2020年人事院一時金勧告に対する声明
人事院は10月7日、国会と内閣に対して国家公務員の一時金削減を勧告した。
人事院総裁談話で「困難な業務であっても誇りをもって真摯に取り組んでいる公務員各位に対し、心からの敬意を表する」と言いながら、一時金を削減するなど断じて許されない。強く抗議する。政府にこの一時金削減勧告を実施しないこと、地方自治体に押し付けないことを強く求める。
そもそもコロナの影響で国民が暮らしへの不安を抱いているもと、すべての労働者の賃金引き下げを招く暴挙であると言わざるを得ない。最前線で奮闘している、公務職場で働くすべての労働者に冷や水を浴びせるものである。
一時金の性格をゆがめる期末手当削減
勧告では、国家公務員の一時金の年間支給月数が民間事業所の一時金支給月数を0・04月上回っているとして、現在の一時金の年間支給月数4.5月のうち0.05月を期末手当から削減するとしている。(再任用は改定なし)
過去6年間、「引き上げ分」すべてを勤勉手当に配分し成績主義の強化を押し付け、今次勧告では期末手当を引き下げている。これは一時金の生活給としての性格を薄め、成績主義を強化するもので、二重三重にも許しがたい。
働く者の要求に背を向ける勧告
本勧告は多くの問題がある。第一に、公務員の賃金引き下げにより、すべての労働者の賃下げにつながるものである。 第二に、消費税増税や新型コロナ危機の下で、マイナス勧告は地域経済にも大きな影響を及ぼすものである。 第三に、慢性的な長時間労働の是正についても必要としながら、要員確保に踏み込んでいないことである。
第四に、非常勤職員の処遇改善につながる具体的な言及や方策が、まったく示されていないことである。
地方自治体にも重大な影響
いま、保健所や病院で働く仲間は、朝から夜中まで、休みの日も出勤して、国民のいのちと健康を守るために働いている。業務量が増えるもとで、自治体、公務公共の現場は大変な過密労働を強いられている。清掃部門をはじめとするエッセンシャルワーカーのがんばりがなければ、住民生活にも重大な支障をきたす。
報告でも、「限られた要員の下で、新型コロナウイルス感染症や大規模災害などに対応してきており、…業務量に応じた要員を確保する必要がある」としながら、人員増の具体策は示さず、一時金の削減のみ勧告している。こんな無責任な勧告はない。
仮にこの勧告が自治体に押し付けられれば、自治体職員にも重大な影響を及ぼす。自治体職員の一時金引き下げが行われれば、職員のモチベーションの低下を招くこととなる。
そもそも、会計年度任用職員は、期末手当のみの支給とされている。一時金相当額を月例給引き下げによって支給している自治体では、処遇改悪につながる。改善要求に応えるものではない。
すべての労働者の賃金・労働条件改善を
この間、人事院は、政権・財界の意向にそって労働者の賃金を抑制し、地域間格差を拡大してきた。人員削減やアウトソーシングなどによって、公務公共サービスを縮小し脆弱にしてきた。
自治労連は、新型コロナの影響で疲弊する地域経済に悪影響を及ぼす一時金削減勧告実施の見送りを、政府に強く求める。
あわせて、不当な一時金削減を許さず、月例給の引き上げを求めて全力をあげる。
懸命に奮闘を続けてきた公務労働者のがんばりに対し、新型コロナ感染防止対応や長時間・過密労働解消に必要な人員確保、会計年度任用職員等の処遇改善を実現させなければならない。
今求められているのは新自由主義からの転換
自治労連は、10月3日の定期大会で、「住民のいのちとくらしを守りきる社会の実現へ、公務公共の拡充を!憲法をいかし、新しい政治に転換しよう!」をスローガンに、新自由主義を転換するたたかいの方針を確立した。
新型コロナの感染拡大は、新自由主義による「自己責任論」や「市場原理」「民営化」が、国民のいのちとくらしを危機にさらすことを明らかにした。「労働者・国民を犠牲にする社会」から、住民のいのちとくらしを守りきる「新しい社会」にするためのたたかいを展開しよう。
コロナ危機の収束が見通せないもと、国民のいのちとくらしを守りきる公務公共の役割を発揮し、すべての労働者の賃金・労働条件改善と憲法がいきる社会を実現するため、全力で奮闘しよう。
2020年10月7日
日本自治体労働組合総連合 中央執行委員会
「令和2年人事院勧告」はこちらからご覧ください