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〔75〕発掘で過去を未来につなげる

かがやきDAYS2021年1月号 Vol.566

発掘で過去を未来につなげる

山口・防府市職労 平井(ひらい) 耕平(こうへい)さん

▲下右田(しもみぎた)遺跡で見つかった古墳時代の住居復元模型と平井さん

今からおよそ1300年前、日本は60余国に分けられました。各国では、政治を行う役所「国庁」を中心に拠点都市「国府」が形成され、8世紀前半に広がりを見せます。古代の「周防国府(すおうこくふ)」もその一つですが、周防国の特徴は、他の国の「国府」が古代のうちに衰退するなか中世まで続いたこと。そのため、全国的にも珍しく中世以降まで遺構や遺物が確認できます(防府市教育委員会文化財課の資料より)。

「中世に入ると、周防国府は周防府中と呼ばれ、そこから防府になった」と防府の由来をサラッと説明してくれたのが、防府市文化財郷土資料館に勤務する文化財課文化財調査係の平井耕平さんです。

1歳から発掘現場に考古学の道へすすむ

平井さんは、防府市の文化財専門員として2013年に入職します。生まれは京都の城陽市。大学院まで京都・滋賀で過ごし、考古学の道へすすみます。

「なぜ考古学の道へ?」と尋ねると、「父親が結婚前に発掘をしていて、母親も結婚後にツテで発掘のパートに…」とご両親のなれそめにも似た話を聞き、「城陽市は古墳の多い町で発掘を仕事とする人も多く、遊び場に文化財があり、1歳の頃には発掘現場に、3歳の頃には古墳の発掘を経験した」と言います。「土器や埴輪を見つけた」とも。「発掘に携わる仕事」は身近な存在だったようです。

文化財のすごさと重要性を感じて

「防府市は文化財が多く、まちづくりに生かすことができる」と平井さんは力説します。開発に伴い出土したものは調査して記録を未来へ伝えていきます。「文化財専門員は6人いますが、文化財の質・量からすると足りていません」。防府市当局に対し「もっと文化財のすごさと重要性を感じてほしい」と熱く語ります。

一つひとつの文化財は、今日までの調査研究の成果ですが、引き続く発掘調査の積み重ねによって、もしかしたら将来、新たな解明がすすむことがあるかも知れません。

平井さんは、将来的な修復・整備のために現在は天御中主(あめのみなかぬし)神社の裏にある前方後円墳(ぜんぽうこうえんふん)を調査しています。作業員の方々とチーム一丸で、後の時代に長い時間をかけて堆積した土を掘り、約1500年前の姿を解き明かそうと日々邁進しています。

▲発掘作業中の平井さん(中央)。前方後円墳のくびれ部の調査

▲防府市文化財郷土資料館の展示物。弥生時代前期~室町時代までの鍋類