住民のいのちとくらしを守る地域医療体制の拡充を
「自治体病院実態調査(中間報告)」「政策提言案」を公表
▲記者会見で医療現場の実態と抜本的な改善を訴える自治労連
自治労連は11月30日、「自治体病院実態調査」の中間報告と「新型コロナウイルス感染を止めるため地域医療体制の拡充を 『住民のいのちとくらしを守り切る』ための政策提言案―自治体病院版―」を公表し、記者会見を行いました。
「人員足りない」の声 依然として厳しい状態
実態調査は、コロナ感染患者を受け入れた40の自治体病院(うち感染症指定医療機関は27病院)から回答を回収。20年4月時点での医療現場について、夜勤実態が2交代職場で月10回、3交代職場で月16回あったことが報告され、人員体制について「人員がまったく足りない」と答えた病院が25%に上りました。また、9月時点の追加調査を実施し、7病院から回答を回収。「患者の入院状況や病状によって必要人員に変動があり、常に調整が必要」「休みは夜勤がらみが多く、十分に休めたと思う日が少ない」など、依然として厳しい状態であることが明らかになりました。
医療費削減政策は誤り 労働環境改善が不可欠
高柳京子・自治労連副中央執行委員長は、政策提言案に触れながら、「国がすすめた医療費削減の医療政策と自治体病院の統廃合は誤りであり、長時間過密労働と人員不足で、通常時からひっ迫している医療体制がコロナ感染拡大で持ちこたえられなくなった」とし、「専門職はすぐに増やせるものではない」「ゆとりを持った人員体制がなければ、不測の事態に対応できない」と国による抜本的な対策を訴えました。
ひっ迫する医療現場 看護基準の改善を
記者会見に参加した鮫島彰・自治労連医療部会議長は全国の状況について報告しました。
「大阪のある病院は、メンタル面を考慮し、看護師は全体の半数を2カ月ごとに異動させている。大阪コロナ重症センターが開設予定だが、看護師・臨床工学士を集めることが非常に困難」「東京のある病院は、入院患者が増えるなか夜勤4人体制を5人にする予定だが、全体の人員が増えないため1人あたりの夜勤回数が月10回以上になることが目に見えている」など実態を紹介。また、「多くの病院はコロナ対応しつつ、今までの業務も行っている。防護具着用は非常に時間がかかり、重症化すれば人員も多く必要になる。通常は看護基準7対1で対応するところ、コロナ中等症以上の患者対応については3対1以上が望ましい」と現場の切実な声を伝えました。
▲自治労連医療部会議長 鮫島彰さん(神奈川県立病院労組)