シリーズ45 いちから学ぶ仕事と権利 多様な働き方と安心して働き続けられる職場の実現を
公務員の定年引き上げ
公務員の定年を65歳までに引き上げる法改正が行われました。今後、自治体で条例改正などがすすめられます。安心して働き続けられる職場の実現と公務公共サービスの拡充につながる制度設計が求められています。
政府は財政難などを口実に社会保障制度を切り捨て、年金支給開始年齢を段階的に引き上げています。年金支給開始までの雇用と年金の接続を図ることなどが背景にあり、すでに民間では高年齢者雇用安定法の改正などにより65歳までの雇用義務があり、70歳までの雇用確保についても努力義務とされました。
今回の法改正で公務員の定年を、2023年4月から2年ごとに1歳ずつ引き上げ、2031年度から65歳定年となります。
定年引き上げの課題(国家公務員の制度)
定年引き上げ後、60歳に達した職員は、次の4月から仕事はそのままでも、給料は7割に減額されます。しかし、民間でそもそも減額する企業は少なく、生計費原則や職務給原則に反しています。他の年齢層の給与にも影響するため、賃金水準の改悪を許してはいけません。
なお、当分の間、60歳に達した以後の退職については定年退職の扱いとなり、退職手当についても不利にならないよう特例措置があります。
また、60歳に達した管理職(国家公務員は「管理職手当」の対象職員)については、翌年度までに管理職以外へ降任します。降任の対象となる範囲の検証や新たな職域開発などが必要です。
60歳以降、「定年前再任用短時間勤務制度」を希望することができます(現在の再任用制度は65歳定年完成まで暫定で存置されます)。
全年齢層の課題としてとらえて制度設計を
制度移行中は、1年ごとに定年退職者が出ない年が生じます。退職者補充の新規採用数に影響し、技術・経験の継承にも影響します。年齢構成のひずみを回避するためにも安定した新規採用が必要です。
また、加齢にともなう体力的事情や家族等の事情に応じた多様な働き方が選択できる制度と安心して働き続けられる職場の実現が必要です。
詳細については今後、自治体ごとに条例で具体化することになります。全年齢層の課題としてとらえ、労使で十分に協議し、丁寧に制度設計することが求められます。
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