シリーズ46 いちから学ぶ仕事と権利 自治体独自の住民サービスを守り、増進させることが重要
情報システムの標準化
国は今年9月から各分野の「デジタル化」をすすめるため、新たにデジタル庁を設置します。国がすすめる地方行政の「デジタル化」によって、自治体や職場にどのような影響や問題があるか、あらためて学びます。
職員や住民の声が反映される庁内の体制を
地方自治体においてもデジタル技術を有効に活用し、住民の福祉の増進(地方自治法)と自治体職員の労働条件の改善が図られることが重要です。一方で、その技術は未完成であり、セキュリティも万全ではなく、使い方によっては住民と職員に重大な被害をもたらします。すでに各自治体では、デジタル化に対応する部署が設置され、その要職に多くの民間企業がかかわっています。
しかし、地方公務員法の服務規程(全体の奉仕者、守秘義務等)の遵守や、システムの開発・変更とメンテナンスが民間まかせになる危険性、入札への関与、自治体政策に直接関与される危惧もあり、自治体が自らチェック・検証・改善できる体制が必要です。
首長や幹部によるトップダウンですすめるのでなく、職員の意見や住民の声が適切に反映される庁内体制をつくり、担当者は、自治体の業務に精通した正規の自治体職員を配置するべきです。
地域に合わせた施策こそ「地方自治」の本旨
各自治体では住民税減免、国民健康保険料や介護保険料の減免をはじめ、災害被災者の負担免除、子どもの医療費助成、新型コロナ対策での休業協力金支給など、自治体独自のさまざまな施策が行われてきました。
デジタル化関連法で、国が定める「標準」に従うことが義務づけられ、自治体独自の仕様変更(カスタマイズ)は原則禁止されました。
しかし、地方自治法第2条13項で「国は、地方公共団体が地域の特性に応じて当該事務を処理することができるよう特に配慮しなければならない」としています。武田良太総務大臣も「情報システムの標準化が自治体の独自施策を制限するものとは考えておりません(4月15日衆議院総務委員会)」と答弁。自治体独自の住民サービスを守り、国に維持・カスタマイズへの財政支援を求める運動が必要です。
そもそも私たちの仕事は住民とのコミュニケーションをはかりながら要求やニーズを把握して行政サービスを提供する役割を担っています。この役割はAIやデジタル技術に代替させることはできません。
「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」の概要
(1)地方自治体の情報システムは、国が定める「標準」に従うことが義務づけられる。
国が「標準化」の対象とする17の業務(共通性があり、標準化で利便・効率性があると国が認める事務)
【住民登録】住民基本台帳、選挙人名簿管理、
【地 方 税】固定資産税、個人住民税、法人住民税、軽自動車税、
【社会保障】国民健康保険、国民年金、障害者福祉、後期高齢者医療、介護保険、児童手当、生活保護、健康管理、就学、児童扶養手当、子ども・子育て支援
以上の事務以外でも、今後は国が認めればいくらでも追加できる。
(2)標準化の対象になった事務について、所管大臣が標準化基準(標準仕様)を定める。
(3)自治体独自の仕様変更(カスタマイズ)は原則禁止。
(4)情報システムを複数の自治体で共同利用するクラウド化を推進する。