2022年度地方財政計画について(談話)
公務員の時間外労働の規制や職場の業務量に見合った人員配置を 喫緊の課題へ抜本的な財源保障求める
2022年2月10日
書記長 石川 敏明
岸田内閣は2022年1月28日、2022年度地方財政計画を閣議決定した。地方の一般財源総額は、コロナ危機で国民生活が厳しいもとで、国・地方税の増収により前年度を203億円増の62兆135億円となっている。一方、地方交付税は前年度から6,153億円増の18兆538億円となっている。臨時財政対策債は前年度より3兆6,962億円抑制して1兆7,805億円となっている。地方の財源不足は前年度より7兆5,664億円減の2兆5,559億円まで縮小したとしているが、依然厳しい。
地方交付税は「2021骨太方針」で、地方の一般財源総額を2022年度から2024年度までの3年間は「2021年度地方財政計画の水準を下回らないように実質的に同水準を確保する」としている。しかし、地方自治体の財源を保障し、財源格差を調整する本来の役割を担うものになっていない。コロナ対応で、地方自治体の財政がひっ迫していることに対する支援も何もない。地方交付税法定率の引き上げをはじめとした抜本的な制度改正こそを求める。
保健所については、新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、2021年度から2年間かけて900名増員の2年目として、2022年度450名増を予算計上した。しかし、年間450人では一保健所1名にしかならず、抜本的な人員不足は解消できない。現場では応援態勢を敷きつつ、年度途中での保健師の採用や、時間外・休日勤務をしながら急場をしのいでいる。本来業務である母子保健や精神保健などの業務を後回しにせざるをえない状況である。保健所の抜本的な増員で、感染対策や「住民のいのちと健康」を守る保健所全体の体制拡充が喫緊の課題である。自治労連は、引き続き現場の声に寄り添い、時間外労働の規制と体制拡充の要求を掲げるとともに、早期の実行を求めるものである。
公立病院経営強化の推進では、きびしい経営状況の改善や医療供給体制を確保するため、2022年度末までに「公立病院経営強化ガイドライン」を策定し、地方団体に「公立病院経営強化プラン」の策定を要請。プランに基づく機能分化・連携強化、医師・看護師確保等による経営強化推進のための財政措置を拡充・延長している。コロナ感染拡大時の対応における役割の重要性や、地域医療を支える公立病院の経営が依然として厳しいという課題認識は評価できる。しかしながらガイドラインは、病床削減を進める地域医療構想を踏まえ、独法化に道を開く経営形態の見直しなどがポイントとされており、都道府県が積極的に助言・提案していくことが盛り込まれている。ガイドラインは、国が一方的に機能再編や統廃合を押し付けるもので、医療需要の変化や医師等の不足を受けた、地域医療を支える公立病院のきびしい経営に寄り添うものにはなっていない。条件を付けての財政支援ではなく、地域住民のいのちと健康を守り、地域医療充実のための財政支援が求められる。
地方公務員の人員については、給与関係費における地方財政計画上の職員数を、義務教育教職員の改善(1,756人)増や保健所の恒常的な人員体制強化(450人)、消防防災行政の状況等の勘案(500人増)や児童虐待防止対策の強化による児童福祉司等(703人)の増員を見込み、5,160人の増員としている。これらの措置は一定の改善であり、コロナ危機で公務公共サービスの重要性が社会的な問題となり、地方公務員の人員増を求める自治労連と住民の共同したたたかいが一定反映されたものである。しかし、労基法33条の規定による、制限のない時間外労働が続き、「辞めるか死ぬか」の選択を強いられている職場実態からすれば、まだ十分とはいえず、健康で働き続けられる職場環境の確立のために、時間外労働の規制や職場の業務量に見合った人員配置が喫緊の課題である。自治労連は「職員のいのちと健康を守る」運動を組織内外で旺盛にすすめ、実効ある時間外労働の規制と必要な人員体制の確保、体制拡充に必要な財政措置を求めて運動を展開していく。
新型コロナウイルス感染症対策については、人流抑制等の影響を受ける事業や生活・暮らしへの支援、「ウィズコロナ」下で社会経済活動の再開等により地方創生を図るとしている。地方自治体が地域の実情に応じて必要な事業を実施できる「地方創生臨時交付金」や、ワクチン接種体制の整備・接種の実施にかかる事業などは2021年度補正予算のみになっている。当初予算にはコロナ危機のもとで相次いだ医療ひっ迫と自宅療養中のコロナ患者に対する手立てや、自粛や雇い止め、失業などで真に困っている国民・中小事業者等への抜本的な生活支援を図る予算は見当たらない。そればかりか、社会保障費の「自然増」分から約2,200億円を削減しようとしている。薬価の引き下げや75歳以上の医療窓口2割負担の導入、感染対策に充てる診療報酬特例加算の廃止なども盛り込んでいる。「デジタル田園都市国家構想」では、デジタル関連事業に総額5兆7,000億円を投入し、通信事業者のインフラ整備をすすめるとしている。民間企業の個人情報を利活用できる環境整備をすすめ、国民監視の危険性があるデータ連携基盤の整備や、大規模データセンターの建設で大企業のための公共事業が推進している。国民には負担増・給付削減を押し付け、個人情報を企業に金もうけの対象として差し出し、個人情報・人権を守ろうとしていない。
国がやるべきことは、国民がどの地域に住んでいても憲法に基づく健康で文化的な生活が営めるようにナショナルミニマムを保障し、地方自治体の財源格差を是正して、地方財政を拡充させることにある。自治労連は、憲法に基づき地方自治法にかかげられている「住民の福祉の増進」を図る役割を地方自治体が発揮するために、国が責任を持って地方財源を保障することを強く求める。
地方交付税については「三位一体改革」で大幅に減らされた額を元に戻し、地方の財源格差を調整し、財源保障の機能を果たすよう制度の抜本的な拡充を図ることを求める。
自治労連は、住民福祉を支える地方財政を拡充させるために、引き続き住民、自治体関係者との共同を広げてたたかうものである。
以 上