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公共を住民の手に取りもどそう 憲法と地方自治を守り、実行する

新春インタビュー 高知・秋田・大阪から

▲要求を書いてアピール(21年のメーデー)

自治労連は、「公共を国民・住民の手に取りもどす」のスローガンをかかげ、今年も住民のいのちとくらしを守り、そのための公務公共職場の人員増と体制強化、労働条件改善をすすめていきます。新春インタビューとして、3つの現場から職場や組合でのとりくみと決意を語ってもらいました。

仕事のあり方、働き方を見直して変えていこう 非正規・民間委託問題

高知公務公共一般労組 香美市保育園支部
園児・保護者にとってだれもが「同じ先生」

高知県東部にある香美(かみ)市は、山間部が多い人口2万5000人ほどの自治体。田村麻由さんと式地由記枝さんは、長年、非正規保育士として子どもたちと接してきました。「職務内容もほとんど一緒で、この間、正規の人員も減り、ますます同じになっている」「若い職員にも教えているほどベテランになったが、担任にはなれない。でも、子どもや保護者から見れば、『同じ先生』として見られています」と、2人は職場の実態を話します。

そして、全国で起こっている保育現場での事件・事故に「職員同士で『あってはならない』と話す機会が増えた。同時に決して起こさないためにも、保育のあり方や働き方について、話し合いが深まっている」そうです。

「3Tアクション」で声かけ仲間ふやすぞ

香美市保育園支部では、毎年の交渉で労働条件を改善してきました。手書きのニュースをつくって仲間に知らせたり、奮闘しています。「組合役員がいる園では、組合が見えやすいですが、そうでない園では、まだまだ大変です。昨年からの『誇りと怒りの3Tアクション』では、アンケートの声かけもやりやすく、みんなも協力的で、つながって話ができてとても良かった」と話します。

「会計年度任用職員になって、いよいよ『3年目の壁』が迫っていますが、香美市職労と一緒になって組合員を増やして、みんなの雇用を守りたい」と2人は決意を語ります。

地域・保護者とつくった保育を守りたいからこそ

「香美市では、保護者とともに民間委託に反対して公立保育園を守ってきた歴史があります。全国で民間委託や非正規化が広がるなか、改めて『子どもたちを大事にする保育』を各地で考えてほしい」と田村さん。式地さんも「正規が減って会計年度任用職員の責任はさらに重くなっているからこそ、その点でも待遇を本格的に改善する必要がある」と訴えます。

田村さんは「私にとって『公共を取りもどす』とは、みんながつなげてきた『香美市の保育を守り、子どもたちに返していくこと』」、式地さんは「最近、民間委託を阻止した経緯を書いた本を読んだのですが、住民の力はすごい。だから、『住民に力を貸してもらい、ともにがんばること』ですね」と笑顔で答えてくれました。

▲田村麻由支部長(左)と式地由記枝副支部長

▲会議のあとは交流会で元気に

長時間労働是正と人員増でだれもが安全・安心な地域へ 災害対応、長時間労働問題

北秋田市職労
記録的な8月豪雨被害 孤立する地域もあった

昨年8月に北秋田市の鷹巣地区7507世帯(1万6565人)に「高齢者等避難」が発令され、学校など36カ所が避難所になりました。建設課に勤める小笠原大輔書記次長は、「自分の記憶にないほどの豪雨でした。雨が収まりパトロールしましたが、これまで浸水したことのない地域まで被害にあい、山間部では土砂崩れや崩落で道路が寸断され、孤立する集落もあった」と当時を振り返ります。

北秋田市は4町の合併で誕生し、県内2番目の広さをもつ自治体。「市の職員・作業員だけでは対応できないため、民間業者の協力も得ながら、災害復旧に向けて一丸となって対応してきました」

日頃からの研修と交流 余裕ある人員体制を

一方で、建設課などで長時間労働が続きました。「8・9月は時間外労働が多くなり、夏季休暇をほとんど取得できなかった」「他課からも応援があり助かったが、専門的な業務もあり、簡単にはいかない課題もある」「それぞれの部署が応援体制に入れるよう、日頃からの研修や交流が大事。同時に人員に余裕が必要で、体制に余裕がないと職員を研修や交流に送りだせない」と指摘。「どの職場も経験の継承が課題となっています」と話しました。

冬は大雪の被害が出る地域でもあり、「勤務前の雪かき、雪下ろしは当たり前になっていますが、『当たり前』にせず、組合として人員や労働条件改善の要求に反映させて整備していきたい」。また、公務における長時間労働の温床となっている労働基準法33条1項・3項についても「職場でも議論深めて、声をあげていきたい」と話します。

だれもが同じサービスを受けられる自治体に

秋田内陸縦貫鉄道が12月12日に運転を再開するなど、北秋田市の復旧はすすんでいます。「多くの支援を受けて、復旧がすすんだ。しかし、道路が寸断されたままの地域があり、復旧に3年はかかる」「今回、農林課はとくに大変で、農地・農業用施設、農作物への被害が大きく、今後も農家への支援が必要だ」と話します。

自治労連の「公共を取りもどす」のスローガンについて受け止めを聞くと「『だれもが同じサービスを受けられるようにすること』かな。市内には点在する住民も多く、山間部など交通が不便で公共サービスが行き届きづらい地域もあります。そういった住民にもサービスをきちんと届けていきたい」と語りました。

▲建設課を陣中見舞いする北秋田市職労(9月21日)

▲毎年、冬になると北秋田市は大雪の影響を受けます

▲小笠原大輔書記次長

「住民のくらしを守る」を仕事の真ん中にしよう 窓口業務委託を阻止

吹田市労連
住民とともに撤回させた市民課窓口の委託計画

大阪・吹田市議会で、昨年3月、市民課業務委託の撤回が全会一致で承認されました。労働組合と住民団体や弁護士、研究者がともに声をあげた成果です。

当初、委託計画に「組合として計画撤回を当局に申し入れ、大阪市など先行して委託している現場では待ち時間は長くなり、サービスも低下、委託費が増大している問題点を指摘してきました。しかし、当局は予算提案にむけて着々と準備をすすめていた」と、吹田市労連副委員長の寺坂美香さんは当時を振り返ります。

「住民団体からも『個人情報を扱う業務の委託は困る』と計画撤回の要望書が次々と出されました」。そして、「吹田市在住で神戸大学名誉教授の二宮厚美先生たちの呼びかけで、『吹田の豊かな公共を取り戻す市民の会(以下、市民の会)』が発足されて、心強かった」

「立派な仕事。がんばって」職場を励ました住民の声

「市民の会が配ったチラシに付いていた返信ハガキが400通も返ってきました。そこには職員への批判の声は一つもなく、『職員は親切に対応してくれます。個人情報をていねいに扱われます。立派なお仕事。がんばって力を合わせて委託を止めてください』『勝手に委託しないで』『個人情報守って』など、職員への感謝や委託への不安の声ばかりでした」

「住民の励ましや思いを知るにつれ、本庁前で配布していたニュースの受け取りがよくなり、不安げだった職場の仲間を励ましてくれた」と寺坂さんは話しました。

どんな職場も知識だけでなく経験も重要

「市の民間委託の流れが変わったわけではない」と寺坂さん。寺坂さんには図書館司書として、図書館の窓口委託を阻止できなかった苦い記憶があります。「自治体DXの名で、今後も委託計画は出てくる。どんな仕事もそうですが、職員にとって、知識だけでなく住民とのやり取りからの経験が重要です。なんでも委託やデジタル化をしていいわけではない」

「吹田では毎年、住民や研究者とともに市政研究集会をしていますが、『住民と職員の距離が広がっている』と指摘されます。住民に接する窓口や各施設から行政に責任を持つ自治体労働者がいなくなっていることは、公共の役割の後退を招いている」と話しました。

「自治労連が呼びかける『公共を取りもどす』って、自分たちの仕事の真ん中に『住民の人権やくらしを守る』という軸を据えることかな」と語りました。

▲昨年2月25日に民間委託計画の撤回を求めるため記者会見を行った市民の会

▲市民の会でチラシを配って計画の撤回を訴えてきました

▲寺坂美香副委員長

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