第79録 黒船から日本を守る紀州徳川の海の要衝
2023年2月号 Vol.591
歴史ある日本のアマルフィ
黒船から日本を守る紀州徳川の海の要衝
和歌山・雑賀崎(さいかざき)
▲自分の船がよく見えるように段々に建てられたのだとか。夕暮れや夜景も絶景です
雑賀衆の本拠地 万葉集に詠まれた絶景
世界一美しい海岸線と言われるイタリアのアマルフィ海岸。そのアマルフィにAIによる「世界遺産そっくり度ランキング」で最も似ているとされたのがなんと和歌山県の雑賀崎。イタリア?アマルフィ?マジ?と思ったあなた。結構マジです。
そんな雑賀崎ですが、日本遺産和歌の浦を構成する、歴史も由緒もある名所です。
724年、聖武天皇がお供の公家・宮廷人達と和歌の浦に行幸した際、藤原卿が雑賀崎の番所(ばんどころ)庭園の北側に広がる海「雑賀の浦」の漁火を見て詠んだ歌は万葉集にも入れられています。
紀の国の雑賀(さいか)の浦に
出(い)で見れば
海人(あま)の燈火(ともしび)
波の間(ま)ゆ見ゆ
ここはまた、かの織田信長を苦しめたといわれる雑賀衆の首領、雑賀孫一の本拠地でもあります。
雑賀崎の漁師は、独自の「一本釣り」をあみ出し、五島列島や房総半島など各地の海を自由に走り回りました。江戸へみかんを運んだ紀伊国屋文左衛門も、その航海術を参考にしたそうです。
番所の鼻は海の見張り
紀州藩は長い海岸線十数カ所に藩内の番所と呼ばれる見張り所を置きました。なかでも海に突き出した番所の鼻は和歌山城に一番近く特に重要とされていました。1853年のペリー来航を機に、紀州藩は本格的に海防にとり組み始め、番所の整備をすすめました。
現在は枯山水の庭園として整備され、プライベートビーチ、バーベキュー場も備える観光スポットです。
海に突き出した断崖絶壁、砕ける白波、見渡す限りの水平線、鷹が飛び交う…!? とくれば…そう、サスペンス! 番所の鼻は数々のドラマのロケ地にもなっているんです。ここを訪れたドラマの主人公は、榊マリコ、窓際太郎のほか水戸の黄門様まで。さまざまなドラマになる所なのです。
雑賀崎には灯台があり展望施設もあります。紀伊水道に沈む夕日、四国や淡路島まで見渡すことができます。
港にはファミリー海釣り公園や鮮魚の船上直接販売、さらに温泉旅館もありますので家族連れでも楽しめます。
和歌山城へは車で20分ほどですので、紀州徳川ゆかりの地を巡る旅もいいですね。
▲番所の鼻。目の前に広がるのは紀伊水道
▲歌碑
▲瀬戸内海国立公園の入口にある雑賀崎灯台