2023年度地方財政計画について(談話)
今こそ公務員の時間外労働の規制と大幅人員増を!「公共を取りもどす」ために充分な財源保障を求める
2023年2月15日
書記長 石川 敏明
岸田内閣は2023年2月7日、2023年度地方財政計画を閣議決定した。地方の一般財源総額は、国・地方税の増収により前年度を1500億円上回る62兆1635億円となっている。地方交付税は前年度から3073億円増の18兆3611億円となっている。「2021骨太方針」で、地方の一般財源総額を2022年度から2024年度までの3年間は「2021年度地方財政計画の水準を下回らないように実質的に同水準を確保する」としている。しかし、地方自治体の財源を保障し、財源格差を調整する本来の役割を担うものになっていない。コロナ対応で、地方自治体の財政がひっ迫していることに対する支援も何もない。臨時財政対策債は前年度より7859億円抑制して9946億円となっている。地方の財源不足は前年度より5659億円減の1兆9900億円まで縮小したとしているが、依然厳しい。地方交付税法定率の引き上げをはじめとした抜本的な制度改正を求める。
保健所については、新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、2021年度から2年間かけて900名増員した。その後の自治労連の運動などもあり、2023年度はさらに感染症対応業務に従事する保健師を約450名増、保健所及び地方衛生研究所の職員をそれぞれ約150名増員の予算計上をした。
しかし、抜本的な人員不足は解消できていない。現場では応援態勢を敷きつつ、過労死ラインを超える時間外・休日勤務を強いられている。本来業務である保健指導や精神保健などの業務を後回しにせざるをえない状況である。保健所の抜本的な増員で、感染対策や「住民のいのちと健康」を守る保健所全体の体制拡充が引き続き喫緊の課題である。自治労連は、現場の声に寄り添い、時間外労働の規制と体制拡充の要求を掲げるとともに、早期の実行を求めるものである。
公立病院経営強化の推進では、2023年度末までに「公立病院経営強化プラン」の策定を要請し、機能分化・連携強化、医師・看護師確保の取組等の支援に係る所要の財政措置を延長している。公立病院が、全国の病床に占める割合は13%にもかかわらず、コロナ対応の即応病床の32%を占め、人工呼吸器等の使用は56%に達する等本来の役割を発揮し奮闘した。地域医療構想による病院削減、病床削減は許されず、抜本的な強化が求められる。
地方公務員の人員については、給与関係費における地方財政計画上の職員数を、保健所等の恒常的な人員体制強化(750人)、消防防災行政の状況等の勘案(500人増)や児童虐待防止対策の強化による児童福祉司等(769人)の増員を見込み、2,618人の増員としている。これらの措置は一定の改善ではあるが、職場の実態からすればまだまだ不十分である。地方公務員の人員増は、コロナ危機で公務公共サービスの重要性が社会的な問題となり、自治体職員の人員増を求める自治労連と住民の共同したたたかいが一定反映された結果である。しかし、労基法33条の規定による制限のない時間外労働を強いられ、「辞めるか死ぬか」の選択を強いられている職場実態からすれば、健康で働き続けられる職場環境の確立のために、時間外労働の規制とともに業務量に見合った抜本的な人員増が喫緊の課題である。
学校、福祉施設、図書館、文化施設等の高騰する光熱費への対応として700億円を増額したが、当初予算にはコロナ危機のもとで相次いだ医療ひっ迫と自宅療養中のコロナ患者に対する手立てや、自粛や雇い止め、失業などで真に困っている国民・中小事業者等への抜本的な生活支援を図る予算は全く足りていない。そればかりか、マイナンバーカードの交付率に応じた普通交付税の割増し分として500億円を計上している。デジタル田園都市国家構想推進交付金申請時にも申請率を要件とするなど、なりふり構わないマイナンバーカードの普及政策は、地方自治体にも歪みを生じさせている。岡山県備前市では、給食費と保育料の無償化に世帯全員のカード取得を要件とし、公平であるべき住民サービスを歪めている。
2023年度からの5年間で防衛費を約43兆円増やすための「防衛力強化資金」の創設を柱としている。防衛力の抜本的強化に必要な一部財源を確保する特別措置法案を閣議決定し、今国会での成立を目指している。これでは、軍事費のためにさらに地方財政が圧迫されることになる。
国がやるべきことは、国民が全国のどの地域に住んでいても憲法に基づく健康で文化的な生活が営めるようにナショナルミニマムを保障し、地方自治体の財源格差を是正して、地方財政を拡充させることにある。自治労連は、地方自治体が憲法に基づき「住民の福祉の増進」(地方自治法1条の2)を図る役割を発揮するために、国が責任を持って地方財源を保障することを強く求める。
地方交付税については「三位一体の改革」で大幅に減らされた制度を元に戻し、地方の財源格差を調整し、財源保障の機能を果たすよう制度の抜本的な改善を求める。
自治労連は、公務公共サービスを支える地方財政を拡充させるために、引き続き住民、自治体関係者との共同を広げてたたかうものである。
以 上