第81録 「用の美」民藝の里 出雲と出西窯
2023年4月号 Vol.593
お気に入りの〝うつわ〟を探して
「用の美」民藝の里 出雲と出西窯
島根県出雲市
▲赤レンガの屋根と木の看板が目立つ出西窯
お気に入りの〝うつわ〟で呑む焼酎の味わいは格別です。また眺めてもリッチな気分にしてくれます。そこで〝うつわ〟を探して島根県出雲市にある出西窯(しゅっさいがま)を訪ねました。
民芸の志を追い求める出西窯
出西窯は、JR出雲市駅から車で10分の斐川町(ひかわちょう)出西の地にあります。1947年に創業し、名もなき職人の手から生み出された日用品としての焼き物をつくります。「民芸(民衆的工芸)」品とも呼ばれ、郷土に育まれ、民衆のくらしのなかで形成される「用の美」を大切にします。生活に必要なものなので、買い求めやすい値段であることも特徴です。
出西窯の〝うつわ〟の魅力
出西窯の色合いはどれも味わい深く、とくに出西ブルーとして知られる深い瑠璃色は目を見張ります。多くは模様がなく、色合いで引きつけます。
焼き物をつくる作業場の隣に、木造の「くらしの陶・無自性館(むじしょうかん)」があり、展示と販売を行っています。お客さんも多く常ににぎわっていました。
私は黒の切立(きったて)湯呑を数個購入。見た目は黒でも下地に錆色がかすかに透けて、光に照らすと赤みのある黒だとわかります。手触りも小さな凹凸感があり、もう最高!呑みたーい!
窯元周辺を「くらしのvillage」に
無自性館では〝うつわ〟の他にも藍染め手織の出西織なども展示・販売しています。また、出西窯、ベーカリー&カフェ「ル コションドール出西」、神戸のセレクトショップ「Bshop」がコラボし、くらしにまつわるさまざまなアイデアを発信するための場所「出西くらしのvillage」ができました。さっそく出西窯のかわいらしいカップでカフェのコーヒーをいただきました。
出雲民藝館
続いては「出雲民藝館」。出雲地方きっての豪農であった山本家の米蔵と木造蔵を活かした出雲民藝館は1974年に開館。最寄り駅はJR西出雲駅、歩いて10分程度で到着します。
受付そばの門をくぐれば正面に大きな母屋。ここは山本家の現住居で内部は見学できません。
メインの本館と西館には、陶磁器、漆器、木工品、染織りなど島根を中心に全国から集められた貴重な品々が展示されています。入館料(一般800円)が必要になります。受付裏の販売店には、窯元の出西窯、湯町窯(ゆまちがま)、袖師窯(そでしがま)、白磁工房などの焼き物が展示されていました。
▲くらしの陶・無自性館内
▲購入した黒の切立湯呑
▲米蔵を改装した民藝館本館