住民とともに地域医療を守り充実させていこう
病床民間移譲診療所化を白紙撤回・再検討へ
千葉・富山(とみやま)国保病院労組
▲今後のとりくみや24国民春闘に向けて行った2月9日の全員集会
千葉県房総半島南部の山あいにある南房総市立富山国保病院について、昨年2月、石井裕市長は「全病床の民間医療法人への移譲、全員解雇」の方針を発表しました。この方針の見直しを求めて労働者が立ち上がり、7月に富山国保病院労組(以下、病院労組)を結成。地域の住民運動も広がり、12月に方針の白紙撤回を勝ち取りました。
災害や新型コロナでも地域を守った国保病院
富山国保病院(以下、国保病院)は、1948年に農業協同組合の診療所として始まり、75年以上、山間部における地域医療の要となって住民のいのちと健康を守ってきました。国保病院は2019年の台風災害や新型コロナ危機でも、患者受け入れなど重要な役割を果たしてきました。
しかし、石井市長は、人口減少や患者数・収益減少、建物の老朽化などを理由に「2027年度までに全病床を隣接する館山市の医療法人に移譲していく。現在の国保病院を縮小し、診療所とする」と方針を発表。病院労組は、団体交渉で「市内山間部の病床がほとんどなくなる」「地域医療を維持できなくなる」と撤回を求めました。
署名や住民運動広がり移譲計画は白紙撤回へ
一方、住民も民間移譲計画に声をあげ、8月には「富山国保病院と地域医療を守る会」が結成され、市への質問書やニュースの発行、反対署名、議員要請を展開。署名は10月、11月で1万3000筆近く集まり市へ提出(12月25日に追加提出し、のべ1万8298筆に)。大きな反響に、市は当初予定していなかった住民説明会も実施。説明会には200人を超える住民が参加し、その多くが「病院がなくなると困る」と訴えました。
そして、12月2日に行われた2回目の住民説明会で、市長は「民間移譲については白紙。多様な方法含め継続して協議していく」と表明。大きな成果を勝ち取りました。
「これからが本番」賃上げと人員増めざす
病院労組は、今後のあり方や検討方法などについて団体交渉を予定。交渉に向け、2月9日に全員集会を開き、白紙撤回までの経緯と教訓、今後の課題、国民春闘の重要性を共有し、グループワークで職種・職場をこえて理解を深め合いました。組合員からは「毎日忙しかったが、集会で今回のことを話せてよかった」「いったん白紙になったが、今後が心配」「職場の人が足りない。なんとかしたい」と率直な思いを語り合いました。
病院労組の渡辺芳久委員長は、「白紙撤回できたのは医師・看護師・職員が信頼される良い医療をしてきた実績に加え、地元住民の全面的な協力を得られたから。たたかいはこれからが本番。地域医療を守るためにも、人員確保や賃金引き上げ、会計年度任用職員の抜本的な処遇改善を要求書に盛り込んでいく。引き続き、住民とともに要求アンケート調査などにとりくみ、市の計画に反映させたい」と決意を固めています。
▲救急対応をはじめ一般病床47床(地域包括ケア病床)・感染病床4床で地域医療を支えている富山国保病院。JR内房線「岩井」駅からバスで25分
▲南房総市は2006年に6町1村が合併してできた自治体。人口は約3万4800人
▲左から病院労組の渡辺芳久委員長、羽山徹書記長、剱持孝市書記次長、茅野貴弘副委員長