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国際基準の権利保障を

ILOが日本政府へ「見直しと改善」を要請

長時間労働への規制が弱く、労働基本権が制限されている日本の公務職場の問題は世界から厳しく指摘されていますが、いまだ日本政府はILO勧告に真摯に向き合おうとしていません。世界の仲間と連帯し改善を求めていきましょう。

▲スイス・ジュネーブで6月3~14日にかけて開催されたILO第112回総会。総会では政府、使用者、労働者の三者代表が各議題について議論します

自治労連の要請内容がILO総会で議論される

自治労連は、全労連、FFN(消防職員ネットワーク)の仲間と5月16~17日、ILOを訪問し、各職場の現状を訴え、総会資料の提供を行いました。消防職員の団結権問題をはじめ、職場での長時間労働やジェンダー問題などの実態を伝えると、ILO国際労働基準局の担当者は、「日本の公共部門が犠牲を払い使命感を持ち、労働組合が是正に努力していることが聞けた」とコメント。ILOからの日本政府への働きかけ強化を訴えました。

そして、6月のILO総会で基準委員会の結論として、誠実さに欠ける日本政府に対し、「労働基本権が享受できるよう地方公務員法を見直すこと」など、改善に向けて具体的な進捗を9月までに報告することを要請。国内外での世論を高めることが必要です。

ILOって何?(International Labour Organization)

国際労働機関。労働条件の改善を通じて社会正義、恒久平和の確立、社会保障等の促進を目的とする国連の専門機関。現在187カ国が加盟し、ILO条約・勧告にもとづき各国に調査などを行います。

▲5月にILOの国際労働基準局、労働者活動局アジアデスク、部門別活動局へ要請を行い、現状を訴えた自治労連と消防職員ネットワーク(FFN)の仲間

公務をとりまく課題と現場からの声

ハラスメントは人権侵害、当局の組合介入は権利侵害

▲茨城・常総市職労委員長 前澤 海さん

要請で、会計年度任用職員が安い労働力として都合よく利用されていること、2015年の鬼怒川水害の経験から労働時間の上限規制が必要であることを訴えた。また、私自身が受けた育児ハラスメントを発言すると、「深刻な人権侵害への理解を深めることができた。引き続き日本政府に問題提起していく」とコメントをいただいた。

さらに当局による機関紙配布への制限問題について助言を求めると、「明白な結社の自由への侵害だ」との言葉に励まされた。日本では、社会と公務労働者が分断・対立させられている。担当者から社会的対話の有用性を示され、対立ではなく「対話による解決」の希望をもらった。

男女平等、ジェンダー視点で公務職場の改善を

▲東京・板橋区職労青年部長 秋山 茉莉奈さん

女性管理職が少ない現状や、育児休業に男女格差があることを訴えた。当局は「男性も育児休業取得が増えた」と言うが、多くは数週間のみで、家事育児などの無償労働を女性が担っている現状は一向に変わらない。

また、昨今の新自由主義的な考え方が強まり、若い職員が組合に展望を持てない現状に助言を求めたところ、「コップの中に水が半分しかないと見るか、半分もあると見るか。たたかい続けることが労働運動である」とILO担当者に激励を受けたことが印象的だった。

削られてきた公務サービスをどう取り戻すか

▲大阪・枚方市職労副委員長 三宅 武志さん

大阪での公共サービスを切り捨ててきた維新政治のひどさや、新自由主義の問題点を伝えたくて要請に参加した。保育現場で、何人もの保育士が細切れで子どもの保育にあたり、しかも有期雇用である実態を報告した。

ILOの担当者からは、最低賃金を下回っている自治体があることや、専門性が高いのに低賃金であることに「問題視している」「日本政府を追及しましょう」と言っていただいた。ILO要請の成果や総会の内容を仲間にどう伝えいかしていくか。削られてきた公務サービスを取り戻すために、しっかり実のあるものにしていきたい。

よりよい仕事ができるよう消防職員に団結権を

▲FFN会長 岩原 伸行さん

消防職員には団結権がないため、賃金・労働条件や職務上の問題を交渉ができない。消防職員委員会制度も代替措置として機能していない。ILO総会で日本政府代表が「消防職員は、自然災害の出動で警察や自衛隊と一体で統制を取る必要があり、団結権の制約はやむを得ない」と答弁したそうだ。しかし、日本の発言にニュージーランドの労働者代表が「私の国も火山が多く自然災害も多いが団結権は指揮命令の障害になっていない」と批判していただいた。5月のILO要請や諸団体との交流の効果だ。引き続き、私たちも総務省に対して要請しながら、改善を求めていく。

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