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核兵器をなくし平和な世界を 憲法をいかす自治体を広げよう

終戦・被爆80年 核兵器の廃絶に向けて ――― 新春座談会

▲新春座談会参加者(写真右から)
桜井 眞吾(自治労連中央執行委員長/進行役)
中村 涼香さん(「KNOW NUKES TOKYO(ノウ ニュークス トーキョー)」代表)
花房 夕子さん(長崎市従組)
橋本 敏子さん(広島市職労女性部)
平田 和弘さん(広島市職労)

1945年8月、広島・長崎に原爆が投下されて終戦となり、今年で80年です。世界では、ウクライナやガザをはじめ、戦争やジェノサイドが続いています。核兵器使用の危機が高まるなか、日本政府は核兵器禁止条約の批准すらしていません。「いま私たちに何ができるか」、ゲストを交えて語り合いました。

「核兵器のない世界をデザインする」ために

桜井 みなさん、あけましておめでとうございます。まずは今回の新春座談会にお越しいただいた「KNOW NUKES TOKYO(以下、KNT)」の中村涼香さんに、核兵器廃絶の実現に向けてとりくまれていることを紹介いただけますか。

中村 みなさん、はじめまして。KNT代表の中村です。私たちは「核兵器のない世界をデザインする」というコンセプトで国際会議への参加やロビーイング、平和学習や展示などの活動をしてきました。私自身、長崎の被爆三世として、高校生平和大使なども経験しながら、平和への思いを大事にしてきました。当時、若者が核兵器の問題に声をあげられるコミュニティがなかったので、KNTを立ち上げ活動することにしました。

桜井 具体的にどんな活動をされていますか。

中村 大きな反響があったのは「あたらしいげんばく展」です。原爆の展示といえば、当時の広島・長崎の破壊状況や被爆者の生々しい経験や痛ましい姿が中心です。私自身もそれが当たり前でした。一方で「関心はあるが、見るのがつらい」「広島や長崎に行かなければ学べない」という課題もありました。私たちが原爆を「今の問題」としてシミュレーション映像やAR技術の活用など新しい切り口で実施したところ、家族連れから「子どもと一緒に見に行くことができた」など展示も好評でした。

今こそ対面で平和を語り合うことが必要

橋本 中村さんたちのとりくみは、すばらしいですね。私は広島市内で保育士をしていて、園児たちに絵本の読み聞かせなどを通して、平和学習を実践しています。広島では原爆のことはとても大事なので、8月6日は記念式典がテレビ放映されます。児童や生徒も登校日で、平和の大切さを学んでいます。毎年、広島自治労連の女性部で平和学習会をしています。ただ、最近の夏は暑くてとりくみも大変です(笑)

花房 長崎も同じですね。9日が子どもたちの登校日です。広島や長崎では当たり前の光景です。長崎市従組の女性部では、毎年折り鶴をつくって、自らも被爆しながら復旧や救援のために働いて亡くなった職員の慰霊碑に捧げています。

中村 みなさん、とても素敵ですね。KNTでは、海外の会議を参考に「核兵器の問題について気軽に触れて、考える空間をつくる」ことを意識して、フォーラムを開催しています。小学生対象の「模擬平和外交」のとりくみも行ってきました。ネットの世界で傷つけあうのではなく、今こそ対面で平和を語り合うことが必要ではないでしょうか。

▲KNTが開催したフォーラム

▲「あたらしいげんばく展」

「平和であること」は要求実現の大前提

「いま、戦前になっているよ」の声にドキリ

花房 長崎市役所で総合窓口の仕事をしています。私自身は、被爆二世で、長崎市をほとんど出たことがなく、他の自治体で原爆のことがあまり知られていないことを知ったときはショックでした。だからこそ中村さんのとりくみを知って、若い人ががんばっている姿に大変感動しました。

平田 山口県出身ですが、広島市で保育士として勤務するようになって、本当に平和教育が根付いていることに驚きました。一方で、広島市長は職員研修で「教育勅語」を引用しており、これに対し、市民団体や組合は引用中止を求めています。

桜井 昨年、地方自治法が改悪され、地方公務員は戦争時に政府(国)の「指示権」のもとで動かなければならなくなりました。軍事費増大も含め、大変危険な流れです。

橋本 市内での署名活動時に、高齢の方から「いま、戦前になっているよ」と話しかけられ、思わずドキリとしました。

花房 私は「平和であることが大前提」「平和でなければ安心して働くこともできない」と呼びかけています。公務員が戦争に加担した苦い経験から「もう二度と赤紙(召集令状)を配らない」決意を重く受け止めています。

日本被団協のノーベル受賞日を記念日に

桜井 日本原水爆被害者団体協議会(被団協)がノーベル平和賞を受賞しました。みなさんの受け止めはどうですか。

中村 とてもうれしいです。高校生平和大使の後輩たちもオスロに招待されたそうです。被団協のとりくみが若い人たちに継承されている背景なども評価されています。

平田 私の周りもとても喜んでいます。一方で広島市として、受賞の意義を取り上げ核兵器廃絶の動きをすすめるべきだと考えます。先日も市にとりくみを強化するよう要請したところです。

桜井 もったいないですよね。受賞した12月10日を記念日にしてもよいくらいです。そうすれば、暑い夏だけでなく、冬もとりくみやすくなると思いませんか(笑)

橋本 そうですね(笑)

花房 12月の平和賞の記念日、良いですね!

労働組合は「声を上げることができる存在」

桜井 中村さんは自治体など行政に対するイメージ、どんな期待をもっていますか。

中村 これまで各都道府県を要請でまわり、全国市長会などにもロビーイングしてきました。自治体が動くことは大変です。しかし、平和を実現するには自治体の役割は重要だと期待します。ぜひ、各地でKNTも取り上げていただきたいです。

桜井 KNTの「広島や長崎でなくても、活動することができる」という視点がポイントですね。岩手の反核平和マラソン、秋田の反核ライダー、四国の反核へんろなど継続している自治労連の仲間が全国にいます。

中村 すごいですね。

橋本 黒い風船を原子爆弾に見立てた展示(1面右下写真)を広島でもやってみたいですね。

中村 本当ですか。うれしいです。

桜井 最後に労働組合の仲間に向けて、メッセージをいただけますか。

中村 みなさんは何かあれば声を上げることができる存在です。平和活動に参加されている方々は、労働組合のことをよく知っておられます。昨年末の韓国での戒厳令の際にも労働組合が率先して立ち上がったそうです。日本でも、そういった役割を労働組合のみなさんが担っているのだと思います。

桜井 ぜひ、力を合わせて、核兵器廃絶と平和の実現をすすめていきましょう。みなさん今日はありがとうございました。

▲広島自治労連 女性部の平和学習

▲長崎市職員原爆犠牲者慰霊碑への折り鶴の奉納と献花

▲中村 涼香さん

▲花房 夕子さん

▲橋本 敏子さん

▲平田 和弘さん

▲桜井 眞吾 中央執行委員長

力を合わせて平和と核兵器廃絶の実現を