第134湯 「温泉マーク」発祥の地で舌切雀がおもてなし
2011年12月号 Vol.457
文学の香りただよう愛妻湯の町 群馬・磯部温泉
「温泉マーク」発祥の地で舌切雀がおもてなし
磯部温泉は群馬県の南西部に位置しています。日本三奇勝のひとつ、妙義山(みょうぎさん)を展望する碓氷川(うすいがわ)沿いに開けている温泉で、「温泉マーク」と「舌切雀伝説」の発祥地として有名な場所です。
地図や温泉饅頭などでおなじみの温泉マークは、万治4(1661)年、付近農民の土地争いをおさめるために江戸幕府が出した判決文の絵図に示されていた記号で、日本で使われた最古のものと判明しています。
また、磯部温泉は多くの文学者が清遊に訪れ、作品を残しました。そのひとつが昔話『舌切雀』。磯部温泉には古くから舌切雀の伝説が伝わっており、児童文学者・巖谷小波(いわやさざなみ)がこの地を訪れ、日本昔話として『舌切雀』を書き上げたことにより、磯部温泉が「舌切雀伝説発祥の地」とされました。巖谷氏が逗留した「ホテル磯部ガーデン」は、名称に「舌切雀のお宿」と冠し、館内の「舌切雀宝物殿」には、はさみ・つづら・舌切雀絵巻など、ゆかりの品が残っています。また、敷地内には舌切神社が祭られ、巖谷氏が逗留の際に詠んだ「竹の春 雀千代ふる お宿かな」の句碑が建てられています。さらに、仲居さんの着物や客室の座布団・寝具・浴衣・食器にいたるまで雀柄という徹底ぶり。おばあさんに舌を切られた小雀を見舞ったおじいさんが、宿で雀たちから大歓迎されるというストーリーにならい、「舌切雀の心でおもてなし」というのが接客モットーのようです。
大浴場は「妙義の湯」と「群雀の湯」の2つ。いずれも露天風呂があり、群雀の湯では滝を眺めながら丸桶型浴槽の美肌湯を満喫できます。
磯部温泉にはもうひとつ、「愛妻湯の町」という名称があります。これは群馬県富岡市生まれの9代目NHK会長・阿部真之介にちなんだもの。磯部温泉を好んでいた阿部氏は恐妻家として有名な人物で、「恐妻とは愛妻のいわれなり」という名言を残しました。そのためか、お土産店では「愛妻まんじゅう」「恐妻やきもち」なる物が売っています。恐妻家もとい愛妻家のみなさんは、ぜひお土産にいかがですか。
驚いたのは、磯部駅を走るJR信越本線。ドアの開閉を乗客が手動で行います。襖を開くように電車の扉を開けるなど、なかなかできない経験でしょう。
▲磯部公園の「温泉マーク原型碑」。ほかに萩原朔太郎・若山牧水などの文学碑が14碑もあります
▲「ホテル磯部ガーデン」館内の舌切雀宝物殿
温泉メモ
【磯部温泉】「舌切雀のお宿ホテル磯部ガーデン」
【足湯】
- 交通/
- 安中市磯部1−131(長寿館前)
- 利用時間/
- 午前9時〜午後6時
- 料金/
- 無料