第136湯 斜面に立ち並ぶ温泉旅館 ここにはきっと福が有る
2012年2月号 Vol.459
山陰屈指の名湯で安らぎのひとときを 島根県江津(ごうつ)市・有福(ありふく)温泉
斜面に立ち並ぶ温泉旅館 ここにはきっと福が有る
島根県の西部、浜田市と江津市のそれぞれの駅からバスで30分ほどの山間に、山陰屈指の名湯「有福温泉」があります。今からおよそ1300年前に、一人の修行僧によって発見されたといわれ、皮膚病・神経痛リウマチ・外傷性障害などに効果があるという全国屈指の泉質を誇ります。斜面に温泉旅館が立ち並び、湯煙のなかで細い路地を行き来する光景は格別です。 「御前湯」「さつき湯」「やよい湯」の3つの共同浴場があります。なかでも、「御前湯」は煉瓦造りのレトロな雰囲気で人気があり、温泉学で有名な松田忠徳さんは、「湯船に入ると、まさにシルクのようになめらかで透明な極上の湯が、優しく身を包んでくれる。美人の湯としても名高いが、この湯の柔らかな肌あたりは山陰の山深い自然ならではのものだ。私自身、はるばる北海道から山陰まで、年に一度はこの湯に浸かりに行くほど、うっとりする感触なのである」(光文社新書『温泉教授の日本全国温泉ガイド』より)と、高く評価しています。 お勧めの宿は、この御前湯の隣にある旅館「よしだや」。上質でサービスが家族的で、しかもリーズナブルな宿です。江戸時代から自家源泉をもち、100%かけ流しで循環はしていません。それどころか自然湧出の温泉なのです。 誰もいないお風呂にひとりザブンと浸かると、上質なお湯が浴槽からザーッとあふれ出し、次にはなめらかで透明なお湯がやさしく肌にまつわりついてきます。ああ、この時の極上な安らぎと贅沢な気分。 そして、入浴後の夕食は女将さんの手作り。地元の素材をしっかり使った料理に好感が持てます。刺身は、浜田港で朝に水揚げされた日本海の鮮魚が並びます。 ロビーには絵画や書など地元作家の作品、冬になると大きなコタツがデンと置かれ、驚きます。朝食後、ここで大きな飴玉をほおばりながら無料サービスのコーヒーをお代わり。至福の朝です。 2011年4月には、この有福温泉街の真ん中に「湯の町神楽殿」がオープンしました。毎週土曜日の夜は「石見神楽(いわみかぐら)」の上演です。八調子の軽快なお囃子に大蛇が登場します。ぜひ、ご覧ください。
▲有福温泉街の風景。上の方に「御前湯」と旅館「よしだや」が見えます
▲湯の町神楽殿の勇壮な「石見神楽」。毎週土曜日に上演されます
温泉メモ
【有福温泉】
- 所在地/
- 島根県江津市有福温泉町
- 問い合わせ/
- 0855−52−0534
(江津市観光協会)
- 泉質/
- 弱アルカリ単純泉
- 交通/
- JR江津駅・浜田駅下車バス30分、
車:山陰道江津西IC下車
- 共同浴場入湯料金/
- 大人300円
【旅館「よしだや」】
- 問い合わせ/
- 0855−56−2222
- 料金/
- 1泊2食8800円より 定員40人