メニュー

【シリーズ145】小さな村で奏でる壮大な音色

My Way My Life2012年10月号 Vol.467

京都・南山城村職(みなみやましろそんしょく) 藤森 雅彦(ふじもり まさひこ)さん

小さな村で奏でる壮大な音色

 京都府唯一の村、南山城村。村役場税財政課に勤務する藤森雅彦さんの趣味はなんとヴァイオリン。始めたきっかけは、小学校4年生のとき。友だちが弾いている姿を見て「僕もやりたい」と親に言ったのが始まりです。  藤森さんは、中学3年から高校卒業までの4年間をイギリスの立教英国学院で過ごし、恵まれた音楽教育環境のなか、個人レッスンを受けていました。帰国後、大学入学と同時に大学の交響楽団に入団。「音が繊細で艶やか。金属的でない木独特の甘い音が出る。この音に気づいた時、ヴァイオリンの魅力に強く惹き込まれた」といいます。  現在、村にある“やまなみグリーネ管弦楽団”というアマチュアの社会人オーケストラに所属。練習は村役場隣のやまなみホールで2週間に1回。メンバーは、大阪、奈良、三重など他府県在住者が主で、村内では藤森さんただ一人です。やまなみグリーネは春の定期演奏会や、年末に行われる近隣地域の「第九」演奏会をメインに活動し、村内の小学校や、成人式などへの出張コンサートも積極的に引き受けています。  今年、やまなみグリーネは創立20周年を迎え、7月の記念コンサートでは多くの聴衆のなか、その歴史にふさわしい音色を響かせました。10月28日には、ホールロビーにてコンサートも予定しています。今回は弦楽四重奏に初挑戦とあって、「自分の演奏の幅も広がるし、アンサンブル能力の向上にもつながる」と練習にも熱が入ります。  印象に残っていることは、「やはりベートーヴェンの交響曲第九番の初めての演奏会。特別な曲です」と藤森さん。一方で、「アマチュアと言っても、楽譜はプロもアマも一緒。妥協は許されないから日々の練習に必死です」と苦笑い。しかし本番になると、「言葉では言い表せないものがある。いつも見ている景色が違って見えるほどの高揚感というか、やってきて良かったなと思う瞬間ですね」と笑顔を見せ、「ヴァイオリンに限らず、“クラシック”は解釈によって新しくなる。一つの曲のいろいろな演奏を聴き比べる『同曲異演』の楽しみを知れば興味が深まると思う」と続けます。  最後に、「オーケストラは人生を豊かにする。これからも続けていきたい」と力強く話しました。

▲奮発して購入した1908年製のヴァイオリンの音色に浸ります

▲最近は「魂が揺さぶられる」というオペラに夢中。DVDもズラリ