第126館 新河岸川と明治の風薫る河岸記念館
2012年10月号 Vol.467
埼玉県ふじみ野市 ふじみ野市立福岡河岸(ふくおかかし)記念館
新河岸川と明治の風薫る河岸記念館
江戸時代から明治時代中ごろにかけて新河岸川舟運(しんかしがわしゅううん)で栄えた福岡河岸には、吉野屋・江戸屋・福田屋の3軒の回漕問屋(船問屋)をはじめ多くの商家が立ち並び、大いににぎわっていました。福田屋は3軒のうちでも新河岸川を行き交う船が一望できる高台上に築かれており、福岡河岸のシンボルの一つとなっています。 1987(昭和62)年に、旧福田屋の所有者から土地と明治期の建造物、1万点以上の民俗文化財や美術品がふじみ野市に寄贈されたことに伴い、翌年度から9年間の歳月、そして約3億9000万円をかけて建造物の解体復元・外観改修と内部修理、外構工事などをすすめ、「福岡河岸記念館」として1996(平成8)年11月に開館しました。 福岡河岸記念館は、市指定文化財回漕問屋「福田屋」の建物を保存・公開し、新河岸川の舟運の歴史と問屋のくらしの展示をしています。あわせて、福岡河岸を含む、周辺の緑地や川風を感じられる気候・風土を活かした建築物です。 築112年、県内で唯一残る木造3階建ての「離れ」がこの地域のランドマークとなっているところから2011年3月14日、県指定景観重要建造物第1号に指定されました。東上鉄道(現東武東上線)敷設に尽力した地元の名士・星野仙蔵氏が接客用として建築したものです。現在、「離れ」の2階・3階見学は、特別公開期間を除き普段は非公開となっています。今年度は月曜日を除く祝日に公開しています。好天の時には、東京スカイツリーや筑波山・富士山が座敷にいながら眺望できる贅沢さです。また、床や天井には幅広の一枚板を多く用い、3階まで6本の通し柱で築いています。建具のステンドガラスや竪繁障子(たてしげしょうじ)など一見の価値ある明治期の貴重な文化財です。 (寄稿・ふじみ野市教育委員会・坪田幹男)
▲中央の建物が1900年建築の木造3階建ての「離れ」
▲福岡河岸から望む河岸記念館。離れが「天守閣」のように見える
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