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第119館 藤城清治氏の「光と影」のファンタジー

日本列島 おどろき・おもしろミュージアム2012年2月号 Vol.459

山梨県甲府市 昇仙峡(しょうせんきょう)影絵の森美術館

藤城清治氏の「光と影」のファンタジー

 三角の帽子をかぶって横笛を吹く小人、動物たちが森のなかで歌い踊る姿などがさまざまに彩られた美しい影絵を、誰しもが御覧になったことがあるはず。作者は、世界的な影絵の巨匠・藤城清治氏。1992年、藤城氏が自ら監修設計した、世界で最初の影絵美術館である「昇仙峡影絵の森美術館」が山梨県甲府市に誕生しました。  建物の外には「館内まっくら!」の大看板。地下に降りると暗幕に仕切られた入口があり、「なかに入ったら3秒ほど目を閉じ、館内の暗さに目を慣らしてください」と説明書きがあります。入っていくと、幻想的な音楽が流れるなか、真っ暗な空間に光と影のファンタジックな世界が浮かび上がります。小人のオーケストラ、海を泳ぐ人魚姫、木にたわむれる鳥、森にたたずむ女神…光と影のコントラストやグラデーション、切り口から生み出されるファンタジックな色彩の美しさに息をのみます。  原画に近づいて見てみると、小さな木の葉や花びらなど、一枚一枚すべてが細かくカッティングされ、さまざまな紙を使ったり、トレシングペーパーやカラーフィルムなどを何枚も重ね、実に細かい作業を経て一枚の影絵が完成していることがわかります。この感動も、原画を直接見ることができる美術館ならでは。  小さな作品から壁画ほどの大作、水と鏡に映して見る作品など、幻想の世界に惹き込まれながら、自然や音楽、そして小さないのちを慈しむ思いが伝わり、やさしい気持ちになれます。発見は、70年代にテレビで大活躍したカエルのキャラクター「ケロヨン」の影絵。なんとケロヨンは、藤城氏がプロデュースしたキャラクターだというから驚きです。  昨年はタレントの太田光(爆笑問題)とともに、絵本『マボロシの鳥』を制作した藤城氏。88歳を迎える今年もますます元気に、私たちを魅了してくれそうです。

▲美術館正面。観光客が多いため、常にタクシーが停車しています

▲ショップで販売されているポストカード。左下の小人の足元にはケロヨンが

 


ミュージアムメモ
所在地/ 山梨県甲府市高成町1035−2
問い合わせ/ 055−287−2511
交通/ JR甲府駅南口バスターミナル3番乗降口より「昇仙峡」行き「昇仙峡滝上」(約1時間)下車
開館時間/ 午前9時〜午後5時
休館日/ 年中無休
入館料/ 一般800円、中高生500円、小学生400円
HP/ http://www.kageenomori.jp/