第111館 屈託のない笑顔残して戦地へ
2011年5月号 Vol.450
鹿児島県南さつま市 万世(ばんせい)特攻平和祈念館
屈託のない笑顔残して戦地へ
太平洋戦争での鹿児島の特攻基地といえば知覧や鹿屋が有名ですが、知覧から西へ約15km、薩摩半島南西部の吹上浜に終戦直前の1945(昭和20)年3月から7月までの約4カ月間だけ使用された特攻基地として、陸軍航空隊の「万世飛行場」がありました。南方戦線の激化に伴って、知覧飛行場だけでは運用に支障をきたすようになり、急きょ万世に補助飛行場が造られたのです。急造のため、滑走路は短く、土を固めただけのものでした。 知覧からの出撃者は436人でしたが、この万世からは少年兵を含む201人の特攻隊員が戦争末期の沖縄へ飛び立っていきました。 1972(昭和47)年に、飛行場跡地の一角に万世特攻慰霊碑「よろずよに」が建立され、さらに、93(平成5)年には、その隣に「万世特攻平和祈念館」が開館しました。 祈念館の外観は、パイロットたちが生まれて初めて飛んだ憧れの練習機「赤とんぼ」の複葉型を模したもので、大屋根は平和を祈る合掌をシンボル化したユニークな形をしています。93年に開館。館内には、吹上浜から引き上げられた日本に一機だけの「零式水上偵察機」や死を間近にした特攻隊員たちが肉親たちに残したメッセージや「血書」、遺品・遺影などが多数展示されています。また、「遺(のこす)」というコーナーでは、映像を使って当時の関係者の証言や資料映像を紹介しています。「万世特攻平和祈念館」には「零式水上偵察機」が展示してあります。この機体は1945年6月4日に沖縄方面へ夜間索敵をしに行った帰りに敵機の迎撃を受け応戦、ガス欠になり、吹上浜沖に不時着したもので92(平成4)年に引き揚げられました。また万世飛行場から出撃した九九式襲撃機の模型や特攻隊員の遺影、遺書などの関連資料の展示もあります。 館内に子犬を抱いた特攻隊員などが集まった写真があります。みんな明るい屈託がない笑顔で、このあと生きて帰れない戦地へ飛び立つ運命をまったく感じさせないことが、戦争の悲惨さをいっそう浮き彫りにしています。
▲祈念館の全景
▲子犬を抱いた特攻隊員の写真の前で説明する職員
ミュージアムメモ
所在地/ |
鹿児島県南さつま市加世田高橋1955番地3 |
問合せ/ |
0993−52−3979 |
交通/ |
鹿児島中央駅から加世田行きバス乗車、 終点で鹿児島交通バスに乗り換え、海浜公園前下車すぐ |
入館料/ |
大人300円、小人200円 |
開館日/ |
12月31日・1月1日を除く毎日 |
開館時間/ |
午前9時〜午後5時 |