自治労連が「第3回全国給食シンポジウム」を開催
子どもたちに、豊かで安全な給食を!
自治労連が「第3回全国給食シンポジウム」を開催
自治労連は、12月8日(日)大阪府岸和田市の波切ホールで、「第3回全国給食シンポジウム」を開催しました。このシンポジウムは、子どもの成長や食育の重要性、食の安全確保など、学校給食のあり方が問われているもとで、自治体が実施する給食の今日的な意義を再確認し、展望と課題を明らかにする目的で開催したもので、給食に関わる調理員や栄養士、保護者や研究者など、全国20都府県から274名が参加しました。
主催者を代表して橋口紀塩自治労連中央副執行委員長が「いま給食のあり方が根本から問われている。給食の質そのものを損なう民間委託など、給食を取り巻く状況は厳しい。今回のシンポジウムで、全国の幅広い実践を学び、直営自校方式の良さをあらためて確認しましょう」とあいさつをしました。開催地となった大阪から、「豊かで安全な学校給食をめざす大阪連絡会」の樫原正澄会長(関西大学教授)が「日本の未来を担う子どもたちの健康と成長、生命に関わる給食は、日本の未来をつくることだ」とあいさつしました。
講演では、食育・料理研究家の吉原ひろこさんから、「給食を豊かで安全な、そしてステキなものにするために」と題し、全国各地の学校給食現場を取材した様子の写真を写し出しながら、取り組みを紹介しました。吉原さんは全国各地の学校給食を取材され、その模様は「朝日新聞」で「学校給食食べ歩記」として連載されていました。
講演では、「調理員と、食べる子どもたちがつながっていなければ、いい給食はできない。安全性はもちろん、栄養や健康のことだけでなく、給食を楽しんでもらう工夫など、給食を通して『食べること』を教えることが大切。ステキな給食にするために、全国各地のすばらしい実践に学び、できることから足を踏みだしましょう」と語りました。
シンポジウムでは、コーディネーターに名古屋芸術大学の新村洋史教授、シンポジストには、「アレルギーの子どもを持つ親の会」から藤田雅美さん、神代雅代さん、給食調理員から、広島市職労現業評議会の山脇慶子副議長、栄養教諭から、大阪教職員組合栄養職員部の石川友美副部長が報告、発言をしました。
シンポジストからは「給食ではアレルギーを持つ子どもにも、他の子どもと同じものを食べるように求められるが、何か事故が起こったら・・・という不安もある。親と学校でアレルギー対策を話し合って、前に進んでいかなければならない」(藤田さん)、「今は朝食を食べない子どもが多く、夕食もファーストフードやスナック菓子で済ませている。そんな子どもは給食が唯一の栄養補給になっており『給食難民』という言葉で表現されている。食べることは『生きる』ということ。公務労働者として現場で働く調理員だからこそできることがある。給食はわが子に食べさせる思いで日々の調理に励んでいる」(山脇さん)、「給食は食の教科書であり、食育の基本となるもの。大阪の中学校で進んでいるデリバリーや選択制では、食育はできない」(石川さん)など、それぞれの立場から発言がありました。
会場からの発言では、「学校がアレルギー対策を進めない中、アレルギーを持つ子どものために除去食を作った。その結果、子どもが『将来は調理員になりたい』と言ってくれたことや、保護者からも涙ながらに感謝をされたことがあった。調理員としてやりがいを感じた」、「東京23区では給食の調理はほとんどが民間委託になっている。『民間委託になってしまったから、取り組みはおしまい』ではなく、どんな状況になっても給食をよくするための取り組みを辞めず、直営での実施をずっと訴え続けていかなければならない」、「自校直営方式は、子ども、調理員、栄養士、教員など人と人とのつながりが強い。子どもたちのことを考えたら民間委託になるはずがない」、「残菜が多い時は調理室から教室に向かい、直接子どもに話しを聞きに行く。子どもの顔がわかるし、子どもも自分のことを覚えてくれる。子どもと仲良くふれあうことを大切にしたい」など会場から活発な発言がありました。
また、シンポジウムに先立ち、会場となった波切ホールの正面玄関前には、全国各地の給食の取り組みがパネルなどで展示されました。シンポジウムの参加者や、別の催しで訪れた来館者も足を止め、全国の取り組みを見て回る人や、写真撮影する人などでにぎわいました。会場では、地元岸和田市職労の給食調理員の仲間が、地元産のエコ農業米と郷土料理の「かた豆」の給食を作り、配りました。参加者からは「思いのこもった給食は本当においしい」「調理員さんのあたたかみを感じた」など大満足の感想が寄せられました。
給食シンポジウムで、岸和田市職労の調理員の仲間が提供してくれた給食
エコ農業米
農薬や化学肥料を通常の半分以下におさえて作られたお米です。15年から地域産のエコ農業米を新米がとれる時期から数か月、学校給食で取り入れています。一般には出荷していませんが、今回の給食シンポジウム参加者のために特別にわけてもらえました。
かた豆
岸和田市の浜手地域で、昔から食べられていた郷土料理です。網にかかった小さな魚やエビを天日干ししたものを「ごより」といい、乾燥大豆をそのまま戻さず、ごよりと甘からく炊きます。給食にも献立で出ますが、ごよりは高価なので「ちりめんじゃこ」を代用しています。