大阪市の橋下市長は、開催中の7月市議会に、「職員の政治的行為の制限に関する条例案」及び「大阪市労使関係に関する条例案」を提出し、翌8月からの施行を狙っている。二つの条例制定は、大阪市職員のみならず大阪市民、全国の自治体職員と国民全体へ向けた攻撃であり、断じて許すことはできない。
「職員の政治的行為の制限に関する条例案」は、国政や市政に対する意見表明などを含む「政治的行為」を禁止するものである。また、「大阪市労使関係に関する条例案」は、「管理運営事項」について意見交換さえ禁止し、さらに「違法な組合活動」の抑制を口実に、労働組合活動の監視、労働組合事務所の提供等の便宜供与の禁止を定めるものである。いずれも、すべての国民に憲法が保障した基本的人権を侵し、地方公務員法を逸脱したものである。
重大なことは、この条例が、連合傘下の市労連幹部と市当局の癒着を理由に、あたかも市職員・労働組合のあり方を正すかのような装いを取りながら、実は、市政に対する市職員・労働組合の意見表明のあらゆる機会を奪い、橋下市長の考えのみを絶対化させる手段となっていることである。
大阪市では、現在、「市政改革プラン」と称して、住民福祉や文化・芸術施策を切り捨てる一方で、その財源を、関西経済界がかねてから主張してきた大型開発に使うことが構想されている。この案に対しては、多くの市民が疑問や反対の声をあげており、市へのパブリックコメントは、3万件近くにのぼっているが、橋下市長は、これら市民の声に対し、コメントした市民を「暇人」呼ばわりしてはばからない。自らの政策をごり押しするためには、「政治的行為」の禁止や、管理運営事項の意見交換禁止によって、行政の専門家として市政を支えてきた市職員・労働組合の口をふさぐ。そうした意味で、二つの条例はセットのものであり、市職員を「全体の奉仕者」から「支配者への奉仕者」に転換させるものである。これが、市民と市職員との「共同」を著しく阻害することは明らかである。
また、目的のためなら手段を選ばない橋下市長の手法は、およそ人権の守り手である法律家がすることとは思えない、卑劣で傲慢なものである。
労働委員会の勧告で中止に追い込まれた職員の思想調査や、その後の入れ墨調査は、自治体業務とは全く関係のない調査を、懲戒処分という脅しを背景に強行したものであるが、その目的は、橋下市長の言うことすべてに従うかどうかを試した踏み絵にほかならないものであった。現在も、こうした橋下市長のやり方に疑問を持ち、「自分の子どもに恥ずかしくない親でありたい」と、執拗で度重なる強要に対しても回答を拒否している仲間がいる。職員の気持ちを踏みにじり、その上に、絶対服従の体制をかたちづくるなど絶対に許されてはならない。
こうした橋下市長のやり方に対し、法律家をはじめ、多くの市民が反撃に立ちあがっている。大阪市労組連の仲間は、民間労働組合の仲間とともに街頭で訴えを続けている。6月25日に行われた府内法律家8団体がよびかけた集会には、1200人を超える市民が駆けつけた。さらに、条例阻止に向けた緊急署名を大きく広げ、7月20日の大阪行動(市議会要請・街頭宣伝)を大きく成功させる。
橋下「維新の会」は、国政選挙へ向けた政策(維新八策)の中で、自治体・公務公共労働者を「全体の奉仕者」から「支配者への奉仕者」に変質させることを表明している。そうした意味で、この問題は大阪市に止まらず、全国の課題である。
自治労連は、労働者の生活改善と、私たちが働く自治体の住民要求実現を両輪の活動として取り組んできた労働組合として、大阪市をはじめとする自治体労働者の人権を守り、二つの条例制定阻止、さらに橋下「維新の会」やそれに追随する諸勢力のごまかしに満ちた企みを全国で阻止するため、広く市民との共同を広げ断固たたかうことを改めて表明するものである。