いのちと地域を守る学習・意志統一集会
1.27地域医療と公立病院の充実を求める
いのちと地域を守る学習・意志統一集会
2008年以来、「いのちと地域を守る大運動」の提起とともに開催してきている第6回目の意志統一集会が1月27日、東京、全林野会館で開催されました。集会には、16地方組織から講師を含め62名の参加がありました。
地域医療をとりまく情勢は、総務省の「公立病院改革ガイドライン」以降、病床数削減、診療所化、診療科削減など各病院での規模の縮小や病院統廃合、独立行政法人化・指定管理者制度導入など経営形態見直しなどで地域医療の後退がすすめられるなか、発生した東日本大震災と原発事故によりさらに深刻化が加速しており、地域における公的医療制度の必要性の要求が広がっています。
記念講演では、岩手県立高田病院の石木幹人院長から、「安全・安心のまちづくりに果たす医療分野の役割―岩手県立高田病院での取り組み」をテーマに講演を受けました。
高田病院は、平成16年に産婦人科の撤退で病床が縮減された経過などもあり、多額の累積赤字を抱えていました。その際、運営方針を確立し1)亜急性期慢性期患者の受け入れ、2)住民に対し1次、2次診療の確保、3)高齢者の医療への対応を掲げ、地域での講演会を開催。同時に住民の要望を聞く活動をしてきたこと。高齢者医療についても、トータルケア委員会を発足させ、リハビリ、排泄などの各小委員会を設置し毎週トータルケア回診を実施。さらに、ケアマネージャー等と地域連携パスを作成し、患者が退院後の生活に安心感が持てるようにしてきた。さらに、寝たきり高齢者の外来通院では予約制外来の「ほほえみ外来」を開始したことなどが報告されました。
このような取り組みのなか平成21年には黒字となり、翌年には病院改築まで決定されていたなか、平成23年3月11日大震災が発生。医療関係施設はほぼ全壊、商業、製造業全壊、全都市機能が破壊され、病院職員74名(消息不明者9名)は入院患者51名中生き残った39名の患者(3名が当日低体温などで死亡)、60数名の一般避難者たちと共に発生日の夜は屋上で過ごし、翌日からは早速職員ミーティングを開始。被災者に医療を届けるため、市内6ヶ所に救護所を立ち上げ復興医療をスタート。いまは被災者への「うつ」予防にむけ、「“畑にはまらっせん“プロジェクト」(病院が仮設住宅の近くの空き地を畑にして仮設住民に使ってもらう活動)も始めているとのことでした。
最後に、地域医療には、高度な医療技術や知識はもちろん、専門にはまらない総合的に患者さんを診察する意欲が大切。地域密着型の病院を支える医師が求められている。住民たちと共に作っていく医療はやりがいあり、そういったことに理解を示す医師が少しでも増えてくることを望んでいると講演されました。
基調報告を松繁憲法政策局長が行い、安倍政権の改憲策動に対し、いのちと地域を守る立場からも憲法25条を守り生かす運動が一層重要、「社会保障制度改革推進法」が、「負担に対する公平の確保/療養範囲の適正化」と称して国民に負担増と給付削減を押し付けており、世論で包囲していくことが求められている強調しました。このほか、TPP前のめりの自公政権を許さないためにも自治体病院キャラバンを展開し、「5局長通知」を生かし具体化させるなど運動を旺盛に進めようと報告しました。
特別報告では、愛知から「災害拠点病院」は、「救急医療の最後の砦」なのに、災害拠点病院となっている市民病院を調査してみたら、液状化が心配される立地状況、ライフライン確保に問題など、災害拠点病院の要件が満たされておらず、機能の充実と共に、ライフラインを守るための技術職員と医療スタッフの確保が必要と報告しました。
自治体病院キャラバンを進めてきた京都自治労連からは、懇談を通じて共通していることは、「いのちを守る最後の砦」として自治体病院を守るために、診療内容の充実や医師・看護師の確保など、大変な努力をしていると報告されました。
討論では各地から6人が報告に立ち、大阪における「りんくう総合医療」における協定書に基づいたとりくみ、橋下市政のもと、廃止方針が出されている住之江市民病院を守るため、300名で住民懇談を成功させ、自治体当局を包囲してきているとりくみ、愛媛における医労連、県労連と共同した自治体病院キャラバンのとりくみなどが報告されました。いずれも、住民と共同して地域医療を充実させようと取り組み、住民から信頼を寄せられている報告でした。社会保障制度改革推進法のもと、医療分野での更なる格差が生じる危険性があり、労働組合の果たす役割と私たちの運動が一層重要となっていることが鮮明となりました。