原発ゼロ、自然・再生可能エネルギー政策推進プロジェクトチーム
自治労連プロジェクトチームが、再生可能エネルギーの先進地域・長野県大町市の小水力発電を視察
自治労連の「原発ゼロ、自然・再生可能エネルギー政策推進プロジェクトチーム」(団長:山口祐二副委員長)は、4月21日(土)~22日(日)、長野県大町市にある「NPO地域づくり工房」を訪ね、小水力発電の取り組みを中心に視察しました。
このプロジェクトは、自治労連として、①原発ゼロを実現するエネルギー政策のあり方を解明する、②再生可能エネルギー政策を地域経済活性化、地域循環型のまちづくりと結合して推進する、③原発ゼロ、再生可能エネルギー普及を進める自治体政策について政策提言を行うために設置したものです。
長野県大町市で、小水力発電などに取り組んでいる住民団体「NPO地域づくり工房」は、「発足して今年10年目。市民の力で地域の資源を生かした仕事おこしをしていこう」と、地域に埋もれている資源を見つけ出し、地域づくりに生かす「くるくるエコプロジェクト」に取り組んでいます。
地域の資源~総延長220キロメートルの水路に着目
大町市は、北アルプス山麓の複合扇状地にあり、水路が標高差100メートル~200メートルを網の目のように流れ落ちており、総延長は220キロにも及びます。「地域づくり工房」は、これを地域の重要な資源として見出し、10キロワット未満のミニ水力発電に取り組んでいます。小水力発電を進めるにあたって、最大の障害は水利権の取得でした。水力発電を行おうとすれば、(旧)建設省時からの通達により、河川法第23条に基づき水利権を取得する許可申請が義務付けられています。農業用水路に小規模な発電装置を設置する場合も、大規模な水力発電所を設置する場合と同様の手続きが求められ、膨大な書類の作成、関係する権利者や管理者からの同意書の取得など、住民にとっては大変な負担がかかり、小水力発電を促進する上で高い壁になっています。
「地域づくり工房」は、この壁を乗り越えるために、膨大な書類作成と関係機関(土地改良区、一級河川に取水口をつくった会社、長野県)から同意書を得るための協議にたいへんな労苦を費やし、許可されるまでに1年半の期間を要しました。とりわけ土地改良区など地元との調整・了解を取り付けることが一番の難関だったといいます。水力発電は「土木8割」と言われるほど土木工事が大事で、安全の確保をはじめ様々な技術的課題もあります。水力発電は、太陽光や風力発電と比べて、ほぼ365日24時間発電できるメリットがあります。その一方で、水路に落ち葉やゴミなどがひっかかりやすく、日常的なメンテナンスを行うことが大変です。発電した電気も現時点では電力会社に買い取ってもらえず、設置している住民も、もっぱら自家発電が中心です。採算面でもまだ効率的とはいえませんが「地域づくり工房」では、「小水力発電を地域づくりに役立つ資源としていかし、有効利用できるように努めていきたい」としています。
行政は住民に寄り添い、サポートをしてほしい
今後、小水力発電を地域で普及する上での課題について尋ねると「電力会社は夜間に発電する電力は買い取りたがらない。小水力発電との系統接続についても消極的で、一台数百万円から1300万円もの費用がかかる逆流防止装置の設置を求めている。この装置は法的に設置が義務付けられているわけではないのに、電力会社は一律に設置を要求してくる。こうした電力会社の対応についても改善をしてほしい」とのべています。
行政に望むものを尋ねると、「水利権の許可について、電気主任技術者の設置が義務付けられていない10キロワット未満の小規模な水力発電は、地元の土地改良区などの同意が得られていれば、許可制から届出制に緩和するなどの措置をとれないか。行政は、小水力発電を行う住民をサポートするなど、もっと住民に寄り添い、この取り組みの主体となる住民を育てる姿勢で対応してほしい」と答えてくれました。また、今年7月から始まる固定価格買取制度について、「巨大発電が前提になっており、地産地消型の発電とはうまくかみあわない。みんなで小規模発電を共有できるような仕組みに変えてほしい」としています。
自治労連は今回の視察に続き、5月には岩手県・葛巻町、7月に京都への視察を行い、再生可能エネルギーを地域・自治体で普及していく上での課題、電力会社や行政への要求、実現すべき政策について、8月の自治労連定期大会までに「提言案」をまとめることにしています。