自治労連公営企業評議会第14回全国公企青年のつどい
第14回全国公企青年のつどいが6月20~21日愛媛県・新居浜市で開催され、15単組59名の仲間が集まりました。
現地の愛媛県公企評では、集会開催に先立ち毎年行ってきた県内職場へのキャラバンで参加を呼びかけ、7単組40名の県内参加者が集まりました。
今回は「中小規模水道事業体の現状と課題を知る」をテーマに開催され、国が進めた簡易水道事業統合や経営統合では問題の解決とならず、人員不足、経営難、技術・技能のさらなる低下が浮き彫りとなりました。
1日目『全体会』では、新居浜水道の秋月さん(4月新採職員)が歓迎あいさつし、愛媛県内の参加者が自分の職場の水道事業をプロジェクターで紹介するリレートーク企画や愛媛県本部の活動紹介、新居浜市長メッセージ紹介がありました。全体会後は、井戸水のみを水源とする新居浜市内の配水設備等を新居浜水道労組・加藤委員長の案内で見学しました。
分科会でそれぞれの職場の実情を交流
2日目には2つの分科会が持たれ、次のような報告・討論が行われました。
- 第1分科会「技術継承・人員問題」-
第1分科会では、各自治体で急速に進んでいる現業職の採用停止と委託化、技術継承の困難性について話し合われました。
【災害復旧さえできない】
現業職が職場にいる上下水道事業体自体がほとんどなくなり、現在、現業職が施設の維持管理を担っている自治体でも採用が行われておらず、今後の展望が見えないなどの状況が報告されました。一部の自治体では、東日本大震災などの経験から「現場力」の見直しが行われ、一定部分の直営力の維持や現業職の採用再開を行っているものの、極少数の自治体にとどまっています。
国は災害時などに速やかな復旧を図るため、BCP(事業継続計画)を進めるよう指示をしていますが、東日本大震災の時、委託化が進んだ上下水道事業体では自治体の職員が日頃から運転や維持管理の仕事をしていないため「施設の場所がわからない」「図面が探せない」「復旧計画が作れない」など復旧の大きな障害となったことも報告されました。
【もはや直営は死語?】
現業職員の採用がなくなり、委託化が進む中で今回の分科会では若い職員に「直営」や「現業」のことばが通じなかったことも深刻な状況です。
委託になった職場に配属された新人は「直営」ということさえわからず、技術屋なのにただ書類だけを作っていることが当たり前と感じて仕事をしています。中小都市では、上下水道の職場から市長部局への異動が多く技術の継承ができていません。「一人担当者」という現状の中で、まったく畑違いの職員が異動してきて一日で文書による引き継ぎ、これでは仕事の経験もなにも引き継げません。
【施設管理への影響】
ある浄水場で薬品が無注入となり取水停止、委託業者ではその原因を突きとめられず、職員も技術継承がされず復旧まで時間を要した、職員が減らされたおかげで、簡易な修理も外注となりかえってコストが高くなっているなど、上下水道の運転管理における問題が報告されました。一方で直営を守っている職場からは、浄水場の規模は小さいが、緩速から膜濾過まであり、運転管理も砂洗いも管の締め込みなども直営でやっている住民にとって頼もしい職場報告もありました。
「僕たちだって委託の書類を作ったり報告書のチェックだけの事務作業でなく、直営で仕事がしたい。その方が安くできるし住民のためになる。」という若い職員の言葉に労働組合として「現場の技術継承」の運動を住民と共に更に大きく進める必要性を感じました。
-第2分科会 中小規模事業体-
第2分科会では中小事業体の現状が参加者から報告され、大都市からの参加者は「地方は想像を超えた状態で事業を行っている」との感想も出されました。
【人員削減の影響】
地方では自治体合併や水道事業・施設統合により業務範囲が拡がっているのに人員は減り、業務量も増えた中で、委託業者の管理もできない状況になっています。「すでに委託になってしまってから採用された職員では『直営』が何かもわからない」「現場を知らないため監督業務も管理職に手伝ってもらう状況」「5年間で10名から6名になり業務は更新工事などで3倍になった中では、とても先のことを考える余裕がない」「配水設備の故障もメーカーがこなければ復旧ができない」などぎりぎりの状態です。
【漏水緊急修繕など】
管工事組合に任せている事業体がほとんどですが、「工事業者にも技能・技術の低下が起こっている」「夜間工事は割り増しがなくては対応してもらえないので緊急対応費用が負担になっている」
【経営状況】
人口減少に伴う水道収益が圧迫し、自治体統合による料金格差問題が解決していない事業体がほとんどです。「料金改定は自分の代ではやりたくないので先送りになっている」「自治体合併時に料金統合に合意していたのでできたが、うちは稀なケース」
このような状況下では、設備更新のための予備施設もない事業体も多く、耐震化などの予算も確保できない状況です。
【災害時の体制】
地方では災害時マニュアルや機材の配備も遅れている状況で「災害が起きないことを願うような心境であり、人も機材も経験もない状態では災害支援などできない」「事務方も理解してもらわないと危機管理は無理、管理職が一般部局からの異動だと理解できないので困る」
これに対し大都市の参加者からは「災害支援に実際に派遣された経験から、災害の場で役立つのは、日頃から現場業務で培ってきた経験だ。大都市が果す役割は大きいので直営現場をまもらなくては」と報告がありました。
水を「商品」にしない運動を!
閉会集会では『分科会報告』と『全国公企評の報告・提起』が行われ、近藤事務局長は「水道事業管理者は水道法・公営企業法の意味を深く理解し、公共の福祉のための水道事業を行わなくてはならないのに、目先の課題だけに追われて人件費を削減した」「人材育成は水道事業の継続のための必要な原価だが、局が市民に説明しない」ことをあげ、「労働組合は地域住民のためにまじめに働いた上で、経営問題にも関心をもち要求していくことが求められる時だ」と提起し、「国、財界の狙い通りに水を『商品』にしない運動を展開しよう」と訴えました。