前 文
1、すべての国民は、生を受けた瞬間から死にいたる人生のすべてを、住民として地域・地方自治体ですごします。 住民は、だれもが人間としての尊厳が保障され、健康で文化的で平和な生活をおくることを願い、日本国憲法はこれを基本的人権の重要な柱として保障しています。 住民自治を基本とする地方自治体は、こうした基本的人権を保障するための「住民のいのちと暮らしを守るとりで」として重要な役割を担っています。また地方自治体は、この国の民主主義の重要な土台でもあります。
2、いま、憲法の国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義、議会制民主主義、地方自治などの原則がふみにじられようとしています。 住民自治と住民生活を擁護すべき国と地方自治体が、大企業奉仕と国民生活の切り捨て政策をおしすすめ、福祉・医療、教育などの国民の生存権をはじめとする基本的人権をおびやかしています。 こうした事態は、自治体労働者の、人として生き「国民全体への奉仕者」としての役割と働く権利を侵害することと一体のものとして進行しています。
3、戦前の自治体労働者は、絶対主義的天皇制政府のもとで「天皇の官吏」として、国民への支配と抑圧、侵略戦争のために働かされた痛苦の歴史をもっています。 戦後、こうした歴史の反省のうえにたって日本国憲法は、自治体労働者が「国民全体への奉仕」を職務とする労働者であることを明記し、国民主権を基本とする憲法の尊重・遵守を要請しています。 私たち自治体労働者は、この憲法の要請に応え、すべての住民の健康で文化的で平和な生活のために、仕事をつうじて努力することを責務とし、誇りにしたいと願っています。
4、憲法は、すべての労働者に労働基本権を保障しています。自治体労働者もその例外ではありません。 私たち自治体労働者は、政治的・市民的自由をはじめとする基本的人権と労働基本権が、「国民全体に奉仕する」職務を遂行するための権利と統一され、一体のものとして保障されてこそ、すべての住民の願いと期待に応えることができるものと確信しています。
5、すべての自治体労働者が、人としての、労働者としての権利を保障されることこそ住民生活と地方自治擁護の道であり、住民生活の繁栄と地方自治の発展が、自治体労働者の生活と権利を守り、誇りと生きがいをもって働くことのできる道です。 私たち自治体労働者は、すべての住民とともにこの道の実現のためたたかう決意のもとに、「自治体労働者の権利宣言」を定めるものです。
第一章 自治体労働者と基本的人権の保障
(自治体労働者の規定) 第1条 自治体労働者は、地方自治体に雇用された労働者である。自治体労働者は、自治体当局に人格上従属するものでなく、その良心や自由を譲渡するものではない。
2 自治体労働者は、地方自治体で働き、「住民全体の奉仕者」としての職務をつうじて、住民の生活と権利を擁護するという責務を担う。
(基本的人権の保障) 第2条 自治体労働者は、国民主権のもとでの主権者であり、憲法の保障するすべての基本的人権が保障される。
2 自治体労働者は、その思想・信条にもとづく意見を表明する自由、政党支持・政治活動の自由、集会・結社への参加の自由が保障される。 自治体労働者は、その思想・信条、性別などによって一切の差別をうけない。
3 自治体労働者は、性による一切の差別を排除するとともに、真の両性の平等が保障されなければならない。
第二章 人間として生き、働く権利の保障
(労働基本権の保障) 第3条 自治体労働者は、自由・幸福を追求し人間として生き、働くために団結権、団体交渉権、団体行動権を有する。
2 これらの権利を制限・禁止する一切の法令・措置は違憲であり、自治体労働者のこれらの権利が自治体当局の支配や介入によって歪められることがあってはならない。
(賃金・労働条件) 第4条 自治体労働者の賃金は、健康で文化的な生活と「住民全体の奉仕者」としての職務を遂行・専念するに相応しいものでなければならない。 また職務・職階制賃金や成績主義賃金などすべての差別分断賃金は、排除されなければならない。
2 自治体労働者の定員配置は、年休権の完全行使とすべての特別休暇の取得とともに、住民本位の行政を保障するものでなければならない。
3 自治体労働者が、人間としての尊厳と自由を回復し、豊かな生活を実現するため、労働時間の大幅な短縮がはかられなければならない。 超過勤務労働は例外的措置として規制され、恒常的な超過勤務は廃止されなければならない。
4 自治体労働者は、健康で安全に働く権利が保障されなければならない。 自治体当局は、これを保障するために快適な職場環境と安全衛生の確保及び労働条件の改善に努めなければならない。
(自治体労働者の身分保障) 第5条 自治体労働者の労働と生活の保障ならびに住民本位の行政の実現のために、雇用と身分は保障されなければならない。
2 採用、人事異動、昇任昇格も労働条件の重要な構成要素であり、民主・公開・平等の原則に基づいて行われなければならず、一切の差別や不公正・恣意的なものは排除されなければならない。
3 自治体労働者は、人事異動、昇任昇格に対し、事前に希望を申し出、内示に対する異議を申し立てる権利を有する。
(賃金・労働条件等の決定) 第6条 すべての賃金・労働条件等の決定は、「労使対等の原則」に立って、その参加する労働組合が使用者としての自治体当局との団体交渉で自主的に決定されなければならない。
(救済措置) 第7条 自治体労働者と労働組合は、自治体当局による不利益扱いや権利侵害に対し、独立かつ公平な第三者機関によってすみやかに救済される権利を有する。
第三章 「住民全体の奉仕者」としての職務遂行上の権利保障
(参加と意見表明権) 第8条 自治体労働者は、地方自治体の政策立案、決定及び執行過程にあたって意見を表明するとともに、行政運営のすべてにわたって参加する権利を有する。
2 自治体労働者は、首長・上司などの職務命令に対し、その内容に重大な瑕疵がある場合、及び職務命令の遂行が自治体労働者と住民の基本的人権を侵害するおそれがあるとき、これを拒否する権利を有する。
(研修・研究と住民への報告) 第9条 自治体労働者は、自由で自主的な研究をおこなう権利、ならびにそのため必要な研修をうける権利を有する。
2 自治体当局のおこなう研修は、憲法と地方自治法の民主的原則にもとづき、自治体労働者がその職務を遂行するための能力向上、人間的成長を保障するものでなければならない。
3 自治体労働者と労働組合は、住民の基本的人権とプライバシーの侵害にかかわる事項を除き、自治体行政の現状と課題を住民に報告できる権利を有する。
(国政・地方政治の民主化と住民との共同) 第10条 自治体労働者と労働組合は、国政・地方政治の民主化のため、住民や住民諸団体と共同して行動する権利を有する。
2 自治体労働者と労働組合は、不公正・乱脈な金権・腐敗などについて真相を明らかにし、その責任を追及する権利を有する。
3 政府・自治体当局は、これらの権利行使に対して、一切の不利益処分や対抗措置をとってはならない
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