自治体労働運動資料室
民主的自治体労働者論アーカイブ
自治体労働者の権利宣言(案)
「自治体労働者の権利宣言(案)」も自治労連の基本文書のひとつです。
「自治体労働者の権利宣言案」(権利宣言案)は1994年の自治労連大会に素案として提起され、翌年の第13回大会で「案」のまま決定されました。
「権利宣言案」は本部や地方組織の役員、自治労連全国弁護団によって「自治労連権利宣言案制定運動検討委員会」がつくられ発表されたものです。成案を得る途中では、自治体労働組合の実態調査・聞き取り調査(注)、シンポジウム(93年7月)が実施されました。
「権利宣言案」が民主的自治体労働者論の生成・発展の側面から見て先駆的・積極的意義を持つのは、「住民奉仕」の職務を行政論の見地から自治体労働者が持つ権利であると位置づけたことです。そしてさらに、自治体労働者が持つ基本的人権と労働基本権を加えて「三つの権利」に位置づけ、それらが一体のものとして保障されてこそすべての住民の願いに応えることができる、としたことでした。
「権利宣言案」はそのうえで、行政論の見地から自治体労働者に「参加と意見表明権」「研修・研究と住民への報告権」「不当な命令への拒否権」を求めています。
かつて日本国憲法の施行を背景に制定された国家公務員法(47年公布、48年7月施行)の規定による服務の宣誓書(49年8月人事院規則)には「主権が国民に存することを認める日本国憲法に服従しかつそれを擁護する」ことが明記されていました。しかしその後、ILO87号条約批准にともない宣誓書の様式が政令(65年公布、66年施行)に改変された下で、その文言は、日本国憲法の原理である「主権が国民に存する」とした表現が削除され、「日本国憲法に服従」が「法令及び上司の職務上の命令に従い」へと改悪されています。「権利宣言案」が持つ行政論からみた見た積極的な提言の必要性はここからも見てとれます。
なお、「案」となっているのは「地方自治憲章(案)」などと同様、完成された文章ではなくその後の情勢と運動の発展の中でより豊かなものとしていくという基本的考えに立ったものです。
(以上「民主的自治体労働者論」第一章より引用)
(注)権利実態調査の書面による調査は2回にわたって行われ、当時自治労連参加は約500単組でしたが、それぞれ約250の単組から回答を得ました。また聞き取り調査は、予備調査2単組をはじめ、規模別・地域別に先行した12単組への訪問調査をおこないました。調査団は自治労連本部3役、担当役員、弁護団1名、事務局を基本に構成しました。聞き取り調査では、組合規約を含めて資料を収集し分析を行いました。実態調査の結果とシンポジウムの報告は資料集としてまとめられています。 |