自治体労働運動資料室
民主的自治体労働者論アーカイブ
【エピソードA】生活保護の仕事そのものに向き合う勇気―貝塚市職労
2008年、新聞で大阪・貝塚市の生活保護問題が連日取り上げられました。例えば「生活保護受給者の転入抑制」、「勝手に府営住宅を申し込んで市外へ厄介払い」「4,000円くらい自分で出せ」だとかいう言動をしたなどと、連日マスコミで取り上げられるという事態が起こりました。
2008年2月、大阪自治労連は弁護士や研究者、貝塚生活と健康を守る会とともに貝塚市の生活保護行政の実態調査に入りました。「国や府を通じて生活保護の締め付けが強まっている。貝塚にとどまらず府下の自治体当局の姿勢や生活保護職場の問題解決をめざす」ためのものでした。
貝塚市職労は大阪自治労連とともに、ひとりの組合脱退者も出さない決意で「住民から何が指摘されているのか、何が問題なのか一緒に考えよう」と、委員長を先頭に調査団の性格や自治労連が関わる理由を丁寧に説明しました。
努力の結果、仕事の進め方に問題があったことの認識とともに、調査団の今後の取り組みへの疑問や市当局の生活保護行政の基本的姿勢への疑問、仕事に関わる複雑な思いなど率直な意見が出され討論が始まりました。そして4月には「80ケースに一人のケースワーカーの基準数を満たす増員」や「業務に関わる研修の確保」などの要求がまとめられ、3度の全員交渉を展開のすえ、当局に人員不足や実施体制の問題について認めさせました。
貝塚市職労の総括は「当初は困惑したものの、行政の政治姿勢を問い、運用と実施体制の改善を世論として訴え、当該労働組合と労働者が『なくせ貧困、守れセーフティネット』の市民の切実な要求実現の立場で共同を発展させれば、市民要求も職場改善要求も大きく前進することを実践的に実感でき、職場の人員増と労働組合の組織強化・拡大も実現した」としています。その後、住民からも「福祉事務所は優しくなった」という感想が寄せられる、という変化もつくられています。
公務公共関係労働者の仕事そのものの内容に労働組合が向き合うには勇気が必要です。大阪衛都連行動綱領草案が提起されて45年、大阪自治労連の仲間は勇気ある一線を乗り越え画期的な到達点を築きました。