都職労は1946年の結成以来、全公連の結成や自治労連、自治労の中で中心的な役割を果たしてきました。本書はその都職労の歴史を東京市従業員組合の活動など戦前の組合活動を前史としてと位置づけて第1巻をあて、第2巻以降が戦後の運動史となっています。
都職労の運動史は、自治体労働運動を様々な面から考えるうえで貴重な資料となります。特に、外部の研究者の協力も得た資料分析など、運動史の到達点を示すものです。
注目されるのは第1巻(前史)です。そのほぼすべてを東京市従の歴史にあてています。
東京市の現業従業員の組合である東京市従は、労働運動が強い制約下にあった戦前においてもっとも活動的な労働組合のひとつでした。研究者の手になる研究書も存在しますが、本書は東京市従研究の決定版と言えるもので、機関紙や大会決定などを網羅し、存命の活動家にも詳しい聞き取りおこなっています。
東京では戦前の東京市従の中心的な活動家であった原田光雄、山我徳一、坪田利雄らが1945年9月初めには組合再建に向けて動いています。戦前東京市従からわかれてつくられた右派の旧雇員同志会もほぼ同じ時期から組合結成に動き始めましたが、市従と雇員同志会は戦前の対立を一切水に流し、一つの組合として発足させることとし、11月23日に東京都従業員組合結成大会が開かれました。東京交通労組とともに、戦後最も早く結成された労働組合のひとつです。