シリーズ20 いちから学ぶ仕事と権利 「中立」の名を借りた言論・活動の封殺は違憲
「政治的中立」
公務員の政治活動や住民の表現の自由を規制する理由としてかかげられる「政治的中立」について学びます。
本来、「政治的中立」は、首長などの政治権力から、公務員を一定の距離を置かせ、公平・公正な公務執行を保障するためのものです。当局が、首長の意図を酌み「政治的中立を守れ」「外に向かって意見を述べるな」と規制すること自体が、「政治的中立」を脅かすものです。
むしろ、政治権力と癒着した幹部職員などがその地位を利用した政治行為は厳に禁止されるべきです。
地方公務員にも言論と政治活動の自由
地方公務員も憲法21条「表現の自由」は保障されており、非現業職員の政治活動について地方公務員法36条で一部規制されていますが、庁舎・施設内と職員が勤務している行政区域以外であれば、ビラ配布や集会への参加は自由です。当局が地方公務員法36条や「政治的中立」を曲解し、一切の政治活動ができないかのように圧力をかけることは間違いです。
なお、公営企業、現業、特定地方独立法人職員などは政治活動規制の適用除外です。また、職員が加入する職員団体と労働組合も政治活動を行うことができます。
「政治的中立」は住民のために
「政治的中立」を「政治に触れない」「権力を批判しない」とすることは、民主主義社会にとっても危険です。権力が憲法を軽視し暴走した際に、憲法を擁護する公務員として暴走を止めるべきです。時の権力におもねらず、憲法擁護を発信していくべきです。
昨年末、さいたま市で「9条守れ」と詠った俳句を「公民館の公平性、中立性を害する」として『公民館だより』への掲載を拒否したことは、憲法違反であるとする高裁判決が確定。作者への謝罪と賠償が行われました。住民サービスを行う上でも「政治的中立」の正しい理解が必要です。