シリーズ21 いちから学ぶ仕事と権利 有給休暇取得の促進を 人員増で権利行使できる職場に
年休の時季指定付与の義務化
労働基準法の改正により、今年4月から年次有給休暇について、労働者に対し、年5日を取得させることが使用者の義務となりました。
低すぎる日本の年休取得率
労働基準法では、雇用された日から6カ月連続して雇用されている労働者に対して、使用者は10日の年次有給休暇(以下、年休)を付与しなくてはならないとしています(最低基準)。これは、管理監督者や有期雇用労働者も同じです(※1・2・3参照)。
しかし日本の労働者の年休取得率はきわめて低く、国際的にみても完全消化が当たり前のEUなどとは大きく隔たっています。このような状況に鑑みて、「働き方改革」関連法案の一部として改正されました。改正後は、使用者は、年休を付与した日(基準日)から1年以内に、時季を指定して5日分の年休を取得させなくてはなりません。
地方公務員は「配慮」する努力義務
時季指定にあたっては、労働者の意見を聞き取り、できる限り希望に沿った時季に取得できるよう努めなくてはならないとされています。また、すでに5日以上の年休を請求・取得している労働者に対しては、時季指定はできないとされています。
地方公務員法ではこの時季指定義務は、適用除外(地方公営企業・現業職員は適用)とされていますが、人事院の通知では「年次休暇を年5日以上確実に使用することを確保するため、計画表を作成し、活用する」こととされており、総務省もこれに準ずるよう通知しています。
自治労連のアンケート調査結果では、4人に1人が年休取得「6日未満」でした(図参照)。
悪質な時季指定は組合でチェックを
時季指定という方法によって取得がすすむなら悪いことではありませんが、5日分とはいえ自由に取得ができない結果になっては本末転倒です。時季指定は、基準日から1年の期間の当初ではなく、半年等一定期間が経過した後に行うようにさせる必要があります。
また、民間職場では「夏休みに指定し、その分夏休を減らす」などの悪用も報告されています。適正な運用には、労働組合のチェックが欠かせません。
そして、有休取得率を引きあげる最善の策は、職場の人員増です。仕事の心配や周囲への遠慮をせずに休める職場環境をつくることです。
※1 全労働日の8割以上を勤務していることが必要。
※2 地方自治体の正規職員の場合は通常、雇用された当初から年休が付与されています。年休の日数も1年について20日となっていますが、年の途中で採用された場合は在職期間に比例して付与されます。
※3 パート職員など所定労働日数が少ない労働者は、所定労働日に比例して付与。