シリーズ28 いちから学ぶ仕事と権利 国の責任で安心の保育を
幼児教育・保育の「無償化」
「子ども・子育て支援法」改正で10月から幼稚園、保育所、こども園などに通う3歳~5歳児(0~2歳児は低所得世帯に限定)が対象となった「無償化」の問題点を学びます。
「無償化」の問題点
「無償化」にともなう問題のひとつは、指導監督基準を満たしていない認可外施設でも5年間は無償化の対象となり、その後も指導監督基準さえ満たしていれば無償化の対象となることです。認可保育所の最低基準を下回る施設が横行しかねず、施設間格差の固定化が懸念されます。
第2の問題は、「無償化」の恩恵が高所得者世帯に集中することです。「無償化」にかかわる経費のうち、50%が年収640万円以上の世帯に使われ、年収260万円以下の世帯に使われるのはわずか1%程度と試算されており、「無償化」を必要とする世帯ほど救われていません。
第3の問題は、給食費の徴収によって、施設間・自治体間格差が拡大することです。従来は3歳以上の子どもについては主食費のみを徴収し、副食費は公定価格(保育にかかる費用)に含まれていました。しかし、給食費が公定価格に含まれていない幼稚園との整合性をはかるという理由から、新たに給食費を別途徴収することになっています(年収約360万円未満の低所得世帯は、副食費は免除)。給食費徴収部分の負担については自治体が全額負担など独自に補助する動きが広がっています。一方で、国基準を超える額を徴収する自治体もあり、すでに自治体間格差が生じています。
自治体の負担増で民営化を促進
最も大きな第4の問題は、公立保育施設の廃止や民営化を促進させる可能性が高いことです。「無償化」の財源は消費税の増税分で、総額は年間7764億円とされていますが、地方消費税も財源に充てられ、自治体が負担することになっています。民間施設の負担割合は、国が50%、都道府県が25%、市区町村が25%ですが、公立施設はそのすべてを市区町村が負担しなければなりません。そのため、公立保育所が多ければ自治体の負担が増えることになり、公立保育所の統廃合や民営化を促進させかねません。
すべての子どもに等しい保育を
すべての子どもたちは等しく質の高い保育を受ける権利を有しています。国の責任(全額国負担)で子どもたちの権利を保障させるために、住民や自治体とも連携した運動が求められています。