第6景 千葉・谷津干潟
2014年10月号 Vol.491
東京湾に残された貴重な干潟
渡り鳥たちの希少な生息地
千葉・谷津干潟
▲シギ類、チドリ類、カモ類などの渡り鳥が見られます
千葉県習志野市にある谷津干潟は湿地帯として渡り鳥の重要な中継地となっています。1960年代から東京湾の埋め立てが進み、現在、干潟近くはJR京葉線、東関東自動車道、国道357号が通っていて宅地や道路に囲まれた40ヘクタール程の長方形の干潟です。
この周辺はかつて谷津遊園地(1930年頃〜82年閉園)があり、バラ園や野球場などもありました。遊園地にあった谷津バラ園の一部は現在も残されており、およそ700種、約7000株が植えられていて春と秋の2シーズンは多くの観光客が訪れます。バラ園入口近くには「プロ野球発祥の地」の碑があり、1936年にベーブルースなど全米チームが招聘された時、日本チームが谷津球場で練習を重ねたほか、日米合同練習も行われたそうです。
ところで、谷津干潟は1970年代以降も埋め立ての話はありましたが、東京湾に飛来するシギ類、チドリ類、カモ類といった渡り鳥の希少な生息地になっていることが指摘され、また保護活動家による宣伝活動や清掃活動によってその重要性が広く住民の間でも認知されたため、1988年に国指定谷津鳥獣保護区(集団渡来地)に指定(面積41ヘクタール、うち特別保護地区40ヘクタール)されました。さらに1993年6月10日にラムサール条約(水鳥の生息地として重要な湿地の生態系を保全する国際条約)登録地に登録されました。
サギ類・カモ類・カモメ類などの水鳥が1年を通して見られ、年間を通じて60〜80の種類、少ない時でも10〜20種類の鳥が飛来し、シギ・チドリ類が飛来する場所として全国的に有名でセイタカシギが定着するなど貴重な環境があり、これらの水鳥の餌となるチゴガニなどの甲殻類が生息しています。谷津干潟公園内にある自然観察センターはバードウォッチングや自然観察ができる施設となっています。
干潟の周囲には散策路も設けてあり、貴重な鳥たちの姿を撮影しようと望遠鏡やカメラを持ったバードウォッチャーも多く訪れるほか、ウォーキングやジョギングのコースとしても利用されています。こんな小さな干潟に渡り鳥たちはよくやってくるものだと感心すると同時に、小さな自然も多くの人々の努力があってこそ守られるものだと思います。
よりみちメモ
【谷津干潟まで】
交通/京成谷津駅より徒歩20分、JR京葉線 新習志野駅・南船橋駅より徒歩20分
【谷津干潟公園・自然観察センター】
所在地/千葉県習志野市秋津5-1-1
電話/047-454-8416
開館時間/9時〜17時(入館は16時30分まで)
休館日/毎週月曜日(祝日等の場合は翌日)、年末年始
入館料/中学生以下無料、高校生〜64歳まで370円、65歳以上180円
▲自然観察センターからバードウォッチング