第9景 12年に1度にぎわう“羊神社”
2015年1月号 Vol.494
12年に1度にぎわう“羊神社”
羊の手水舎(ちょうずや)や親子像が参拝客をなごませます
名古屋市北区辻町
▲1000年以上の歴史を持つ“羊神社”
▲仲良く寄り添って並んだ羊の親子像が迎えてくれます
干支が巡ってくる12年に1度、初詣客が平年を遙かに上回って、1㌔余も列をなす神社が名古屋市北区辻町にあります。神事や祭礼のときだけ神職さんがやってくる、鳥居から社殿まで5分もあれば往復できそうな、閑静な住宅地にある小さな〝村の鎮守〟様。そんな感じがピッタリの地域の人たちの守り神「羊神社」。
神社の創立年月日は不詳ですが、延喜年間(西暦901~922)にまとめられた延喜式神名帳に、尾張の国山田郡羊神社と記される式内社で、本国帳に従三位羊天神とある古社です。
祭神は、天照大神(あまてらすおおみかみ)と火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)(日本神話における火の神)。
社名の由来は、群馬県多野郡吉井町にある「多胡碑」(日本3古碑の一つ)に刻されている「羊太夫」(多胡郡の領主)が、奈良の都へ上るときに立ち寄っていたゆかりの屋敷がこの地(辻町)にあり、土地の人々が平和に暮らせるようにと火の神を祀ったといわれ、羊神社と呼ばれるようになりました。
辻町の由来も「里の名を辻というも御社の羊の名にし負えるとぞ聞く」と伝えられるように羊にあり、のちに火辻(ヒツジ)村と書かれましたが、火の字を嫌って辻町となったとも言われます。
羊神社にも、他の寺社と同じく狛犬が社殿を守っていますが、それとは別に、寄り添って並んだ羊の親子像が迎えてくれます。念の入ったことには、鳥居をくぐったところにある手水舎にも、羊が水口となって参拝者を微笑ませます。
近くには、名古屋城のお堀に水を引くために寛文3年(西暦1663)につくられた御用水(今は埋め立てられて)跡街園という遊歩道があり、沿って流れる黒川(明治10年につくられた)に泳ぐ鯉を探しながら、木々の間を散策するのも楽しいです。
11月の半ばに伺った折、参拝者の行列に備えて交通整理の打ち合わせや干支の絵馬の準備にと『氏子さんたちはお正月準備に大忙しです』と楽しげに話されていたのが、「羊神社」を大切に、地域の文化を守っているのだな、と感じられます。初詣ではここに、と思わせてくれました。
よりみちメモ
【羊神社】
最寄りの駅は、地下鉄上飯田線「上飯田」下車。北へ向かって御用水跡街園を三階橋の手前を左に行けば、小さな案内板が目に入ってきます。駅から徒歩7分の距離。
住所/名古屋市北区辻町五丁目26番地
▲持てば家庭円満“夫婦羊の絵馬”
▲かわいらしい羊の手水舎(ちょうずや)