第12景 歩くだけでタイムスリップ 銘酒生み出す『マッサン』の故郷
2015年4月号 Vol.497
製塩・酒造で栄えた歴史のまち
歩くだけでタイムスリップ 銘酒生み出す『マッサン』の故郷
広島・竹原市
▲竹鶴酒造。政孝は、竹鶴酒造本家の主人夫妻が亡くなった際、
政孝の父・敬次郎が本家の長男の後見として酒造業を引き継いだため、
本家で生まれたそうです
NHK朝の連続テレビ小説『マッサン』の主人公亀山政春のモデルでニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝は現在の広島県竹原市で生まれました。
JR竹原駅から歩いて15分ほどのところに町並み保存地区があります。
6世紀ごろには竹原には大宰府から都への山陽大路が走り、平安時代には京都・下賀茂神社の荘園(しょうえん)がひらかれました。近世になると竹原湾を干拓して塩田をつくり塩の町として発展しました。製塩業や酒造業で財を成した商家が多く、高い漆喰壁や大きな蔵のある立派な屋敷が並びます。
江戸中期から明治にかけて建てられたという屋敷は今もほとんどが個人の住まい。〝マッサン〟の生家・竹鶴酒造もそのひとつで、保存地区のメインストリート・本町通りにあります。「小笹屋(竹鶴酒造の屋号)酒の資料館」がありますが、閉館中でした。
竹原の町家は竹原格子と言われる意匠を凝らした格子が特徴です。さまざまな組み方や模様の飴色をした木の格子が町をしっとりと彩ります。
レトロな木造の郵便局や写真館も残されています。歩くだけで何となく心が落ち着く、懐かしくなる、タイムスリップした気分になる、そんな町並みです。
本通りの突きあたりには原田知世主演の大ヒット映画『時をかける少女』の舞台になった「胡堂」があります。尾美としのり演じる堀川吾朗の実家・堀川醤油店は実在の醸造所です。系列のお好み焼き店「ほり川」には長蛇の列ができていました。純米吟醸の酒粕を使った「たけはら焼」が名物です。
「お父さん犬」のテレビ㎝や写真好きの高校生を描いたアニメ映画『たまゆら』の舞台にもなりました。ロケ地めぐりも楽しそうです。
東京から故郷竹原に戻って骨董店を営むご夫婦に話を聞くと、「朝ドラ人気でいまはプチバブル」とのこと。「町も人もいい。何より食べ物がおいしい。古いものを大切にし、骨董も多い」と魅力たっぷりの竹原。『マッサン』が終わってもまちの魅力は変わりません。
お土産には地酒をどうぞ。各醸造所が腕を競い、銘酒ぞろいです。
よりみちメモ
竹原駅までは、広島駅からJR呉線で1時間50分、または高速バスかぐや姫号で1時間10分、JR三原駅からJR呉線で40分
▲大きな屋敷が並ぶ本町通り(右上)、
堀川醤油醸造所。映画『時をかける少女』に登場。
撮影に使った看板のレプリカがかけられています(左上)、
さまざまな木の格子が町の特徴のひとつ(左下)