第19景 市民がつくり運営する戦争と平和の資料館
2015年12月号 Vol.505
愛知県名古屋市・ピースあいち
市民がつくり運営する戦争と平和の資料館
世代超えた市民の交流の場
▲名古屋市の住宅街にある「ピースあいち」の外観
「ピースあいち」は名古屋市の住宅街のなかにあります。
資料館には「愛知県下の空襲」「戦争の全体像 15年戦争」「戦時下のくらし」「現代の戦争と平和」と4つのテーマの常設展示があります。「眼をそらさないでください」と大きく記されたパネル展示には、「沖縄」「原爆」「空爆」「日本軍兵士の死」に加えて「中国民衆の死」と題して南京大虐殺のパネルもあり、日本人の被害者という側面だけでなく、加害者の側面にも目がむけられています。
「戦時下のくらし」コーナーには当時の茶の間が再現され、ちゃぶ台の上には「いろはカルタ」が並べられています。「コクボウフジンハ ジュウゴノマモリ」「キツイニツポン ヨワイシナ」(強い日本 弱い支那)。こういう遊びを通じて軍国少年がつくられていったんですね。見学の折、ちょうどボーン、ボーンと掛け時計が時を打ったので、タイムスリップしたような気分になりました。横には「一億憤激米英撃墜」と扇動する「血戦貯蓄増強期間」のポスターも。
また意欲的に企画展が催されています。筆者には「竹内浩三の詩とその時代」展がとくに印象に残りました。
竹内浩三をご存知でしょうか。その詩「骨のうたう」では、戦死し骨となった自身が冷徹に戦後を見通していました。高名な詩人が戦争を煽っていたときに-。
骨は骨として 勲章をもらい/高く崇められ ほまれも高し/
なれど 骨は骨 骨は聞きたかった/絶大な愛情のひびきを 聞きたかった
こうした展示だけでなく、図書・ビデオも備え、コンサートや映画鑑賞会、ブックレット発行など多彩な活動が高齢者や若いママらの手で行われています。10月にはSEALDs(シールズ)メンバーを迎えてフォーラムが行われ、SEALDs TOKAIの学生や高校生はじめ、世代を超えて約100人が参加しました。
戦争の教訓を次世代に伝えたいという市民有志の愛知県、名古屋市への請願から始まり、頓挫した時期もありましたが、篤志家の寄付申し出をきっかけに、市民の募金によって、「ピースあいち」は創られました。
2010年10月に愛知県教育委員会から「博物館相当施設」指定を受けています。
よりみちメモ
【ピースあいち】
交通:名古屋市営地下鉄東山線「一社駅」下車 徒歩約15分
開館:火曜日~土曜日 午前11時~午後4時
休館:日曜・月曜、年末年始など
所在地・名古屋市名東区よもぎ台2-820
問い合わせ:052-602-4222
▲「戦時下のくらし」コーナーには当時の茶の間を再現