〔34〕 こんな時代だからこそ演劇を
2017年4月号 Vol.521
ひとつの世界を創りあげる歓び
こんな時代だからこそ演劇を
岡山市職労 風早(かざはや)孝将(たかまさ)さん
▲2011年3月公演『MORAL』舞台
昨年岡山市で開かれた自治労連第38回定期大会の現地歓迎行事で、演劇『原子力の夜』が上演されました。今月はその脚本を書かれた岡山市職員、風早孝将さんに登場願いました。
脚本の依頼を受けて、自治労連岡山県本部で原発について時間をかけて話し合いました。その議論がなければ『原子力の夜』は書けていないと思います。原発に関するさまざまな本も読んで脚本を仕上げました。
脚本を書くときは苦闘の連続です。世の中には楽しいことがいっぱいあるのに何をやっているのだろう、もうこんなことヤメタ、と毎回考えるのですが、公演が終われば、また芝居がやりたくなります。
好きな劇作家は如月(きさらぎ)小春さん、松田正隆さん、柳沼(やぎぬま)昭徳さん。好きな作品だと、ソーントン・ワイルダーの『わが町』です。
6年前の3・11発災時は、演出をしていた如月小春作の『MORAL』の本番日でした。劇中「私がここにいることを知らせたい」というセリフがあり、お客さんと一緒にその言葉の重みを感じたことを覚えています。これを受けて、翌年『12月34日』という脚本を書いて上演しました。
現在、県内の演劇人で劇団の枠を超えてLOOP⑩というグループを結成しています。
いまのネット社会はとても便利ですが、消費するだけの社会になっていないでしょうか。人と直に交わることが少なく、閉じた世界から相互に誤解したり、衝突したり、すぐに切れたりする。この先どんな未来が待ち受けるのかと思います。そんななか、LOOP⑩は演劇に触れる人を増やし、人と人が直接交わり、一つのものを創ろう、それが地域活性化につながるのではないかと、公演やワークショップなどを企画してきました。
市民公募で上演 人が出会う場をつくる
私は昨年9月に『あゆみ』という群像劇を演出しました。キャストは市民公募です。学校、会社、世代を超えた参加がありました。劇を創るプロセスでは、みんなで激論になることもあります。でも、それを越えてひとつの世界を創りあげたときの歓びは何ものにも換えがたい。公演終了のときは、中学生ら、参加者のみなさんの眼の輝きが最高点に達します。
今年も10月末に柳沼昭徳作の『八月、鳩は還るか』という、喪失と希望の物語を演出します。
キャストはやはり市民公募です。これからも演劇を通じて、人とひとが出会う場づくりにかかわっていきたいと思っています。
▲「公演が終われば、また芝居がやりたくなる」と風早さん