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第16録 水がつくりだす山海のめぐみと温泉

いい旅ニッポン見聞録2017年5月号 Vol.522

鹿児島県熊毛郡屋久島町

水がつくりだす山海のめぐみと温泉

自然と人と神の島

▲圧倒的な水量の千尋の滝

世界自然遺産の屋久島は1935メートルの宮之浦岳をはじめ1000メートル以上の山が46座も連なり洋上アルプスともいわれます。『放浪記』の林芙美子が小説『浮雲』で「月のうち、35日は雨というぐらい…」と書いたように、日本有数の雨量を誇る豊富な水が屋久島の自然を作り出しています。今回は豪雨のため予定していた屋久杉めぐりを断念し温泉へ。

南部のモッチョム岳の麓に尾之間(おのあいだ)温泉があります。地区の共同浴場で住民のほか登山帰りの人が汗を流していきます。

温泉は湯船の足元から自噴する単純硫黄泉・低張性アルカリ性高温泉で、さらっとした泉質で44~49℃とかなり熱め。地元の人はさっと浸かっていきますが、こちらは爪先をちょっとつけただけでも悲鳴をあげそう。気合を入れないと肩まで浸かれません。なんとか浸かって上がると、肌はすべすべです。

近くに屋久島を代表する観光スポット、千尋(せんぴろ)の滝があり、轟轟と音を立てる姿は圧巻です。

温泉で有名なのが平内(ひらうち)海中温泉。野天風呂の中の野天風呂とも言われ、干潮時2時間ほどだけ海辺に現れます。もうひとつは湯泊(ゆどまり)温泉。こちらも海に面し野趣あふれる温泉で男女を分けるのは低い衝立てだけです。水着禁止であまりのオープンさに女性が入るには度胸と勇気がいります。

島一周のドライブに。西部林道の原生林は日本最大の照葉樹林帯です。崖沿いをそろりそろりとすすむと子づれのヤクザルが……。こっちをじーっと見ます。

マイナスイオンを吸い込みながらさらに行くとヤクシカが登場。鹿といえば奈良・春日大社の神使におやつを奪われたことが頭をよぎり身構えますが、ヤクシカは小さくておとなしく、さっと逃げていきます。

動物たちに気を取られていると車からなにやら不穏な音が……。まさかのタイヤのバースト! 無人地帯で携帯の電波も届かない! 通りかかる車に助けを求めますが、なかなかとまってくれません。遭難!?と泣きそうになったとき、群馬からのご夫妻がレンタカー会社まで乗せてくれました。万が一の対応をレンタカー会社に確認しておくと安心です。

屋久島グルメのイチ押しは「首折れサバ」の刺身、トビウオのつけ揚げですが、「ジビエ(狩猟肉)」ブームでヤクシカ料理も名物になりつつあります。かわいかったなぁ…でも、「おいしー」。自然のめぐみと命に感謝しつつヤクシカのピザに舌鼓。雨の屋久島もいいものです。

▲ぜーんぶ外で開放感いっぱいの湯泊温泉

▲ヤクザルの子どもも雨でびしょぬれ

見聞メモ
【アクセス】
鹿児島空港から飛行機で約30分、鹿児島本港南埠頭からジェットフォイル(トッピー、ロケット)で約1時間45分。天候に影響されますので余裕を持った旅程を。
【問い合わせ】
屋久島観光協会 TEL 0997-49-4010