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第43録 バスとフェリーのコラボレーション

いい旅ニッポン見聞録2019年11月号 Vol.552

鹿児島・鹿屋間を最短で結ぶ

バスとフェリーのコラボレーション

鹿児島県鹿児島市・鹿屋(かのや)市

▲フェリーの車両甲板に乗客ごとバスが乗り込みます

鹿児島市と鹿屋(かのや)市は錦江(きんこう)湾をはさんで対岸にありますが、そこを結ぶちょっと変わったバス路線があります。

鹿児島から鹿屋へバスが「海を走る」??

鹿児島随一の繁華街、天文館。アーケードから少し東へ行った金生町(きんせいちょう)にあるバス乗り場から、「かのや直行バス」と書かれたバスが出発します。一見普通のバスですが…。

天文館、さらに鹿児島中央駅で乗客を乗せ、バスは鴨池港へ。フェリーへの乗船を待つトラックや乗用車の列に並んだバスは、なんと乗客を乗せたままフェリーへと乗り込みます。路線内にフェリー乗船が組み込まれている、現在では日本で唯一の路線バスです。

バスがフェリーに入ると乗客はフェリー内に「下車」することができます。運転手から乗車証明券をもらい船内に降りてみましょう。

車両甲板からデッキに上がると、目の前には桜島が。以前は島だった桜島は、大正時代の大噴火で溶岩が流れ大隅(おおすみ)半島と陸続きになりました。現在でも日常的に小規模噴火を繰り返し、噴煙をあげる桜島のすぐ横をフェリーが走り抜けます。船内では名物「南海うどん」の販売も行っており、出汁がおいしいと地元でも評判です。

垂水港までは約45分。フェリーが港に到着するとバスはまた走り出します。大隅半島の西海岸に沿ってしばらく走り、鹿屋体育大学を経由して鹿屋市の中心市街地まで、約2時間の旅です。

観光にも生活にも重要な役割

現在の大隅半島には志布志市以外に鉄道がありませんが、かつては志布志から鹿屋を経由して国分で日豊(にっぽう)本線に接続する国鉄大隅線がありました。しかし、民営化直前の1987年に廃止。鹿児島市と鹿屋市を行き来するには錦江湾を迂回する国道を車で走るかフェリーを使うしかありません。そのなかで、九州新幹線の鹿児島中央駅までの全線開通に合わせて新設された直行バスは、乗り換えもフェリーの待ち時間もない利便性から、観光だけでなく生活の足としても重要な役割を担っています。

かつて鹿屋駅があった場所は現在では市役所となっています。隣には鉄道記念館があり、さまざまな鉄道用品や車両の展示のほか、大隅線最終日の様子を再現したコーナーなど、この地域の鉄道の歴史を知ることができます。一風変わったバスに乗って、大隅半島の交通の歴史を訪ねてみてはいかがでしょうか。

▲乗車証明券はなくさないようにしましょう

▲間近に見る桜島は大迫力

▲フェリー名物「南海うどん」。写真は月見かきあげうどん

見聞録メモ
【鹿児島交通】
「鹿児島中央駅―鹿屋間直行バス」
鹿児島中央駅―鹿屋リナシティ前
大人1400円、小人700円
【問い合わせ】
鹿児島交通鹿屋営業所:0994-65-2258