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36冊目 風よ あらしよ

図書館の本棚2021年3月号 Vol.568

36冊目

風よ あらしよ

村山由佳 著

「強い風こそが好きだ。逆風であればもっといい」。タイトルはアナキストとして明治大正を駆け抜けた主人公・伊藤野枝の言葉が元となっています。言葉から受ける激しいイメージとは異なり、彼女はあくまでも生活に根ざした、人間くさい一人の女性です。

彼女を取り巻く社会運動家や作家たち、同志であり3番目の夫でもある大杉栄の「ダメンズ」ぶりと人間的魅力、彼への野枝の究極の愛が描かれます。それだけに関東大震災直後に2人が甥とともに憲兵隊に虐殺されるという悲惨な歴史的事実の結末が近づくにつれ、胸が苦しくなりますが、読後感は意外とさわやかでした。

集英社
2020年9月発行
四六判 656ページ
価格:2,000円+税