第58録 東日本大震災津波伝承館「いわてTSUNAMIメモリアル」 「命を守り、海と大地と共に生きる」
2021年3月号 Vol.568
私たちは忘れない! 大津波の記憶、教訓を伝承
東日本大震災津波伝承館「いわてTSUNAMIメモリアル」
「命を守り、海と大地と共に生きる」
岩手・陸前高田市
▲「追悼の広場」の献花台から広田湾が見えます。来訪者の花束が絶えません
東日本大震災から10年。この経験を風化させず、さまざまな教訓に生かすことが大事です。
一昨年9月、陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園内に東日本大震災津波伝承館(「いわてTSUNAMIメモリアル」)がオープンし、コロナ禍のなかでも28万人(1月末現在)が来館しています。「開館後、世界で新型コロナウイルスの感染が広がり、残念ながら海外からの見学者は来られなくなってしまいました」と伝承館事務局スタッフは話します。
被害の実態を展示物でリアルに
この場所は震災前、約7万本の松林で覆われた「白砂青松(はくしゃせいしょう)」の海浜公園で、岩手自治労連も過去に駅伝大会や自治体職員野球大会を開催しています。10~15メートルの大津波が一瞬で松林をなぎ倒し、奇跡的に耐えたのが復興のシンボルとして有名な「奇跡の一本松」です。
伝承館は、東日本大震災津波の事実と教訓を世界中の人たちと共有し、自然災害に強い社会を実現する目的で造られたものです。館内には「命を守り、海と大地と共に生きる」をテーマに、「事実を知る」「教訓を学ぶ」など4ゾーンに被災物や写真パネルが、英語、中国語、韓国語の解説付きで展示され、解説員が常駐しています。
ガイダンスシアターでは沿岸部を襲う大津波や当時の被災者の証言、災害支援の映像を観ることができます。また、展示室の津波で破壊された気仙大橋の橋桁部分や、押しつぶされた田野畑村(たのはたむら)の消防車などを見ると、大津波のエネルギーの大きさに圧倒されます。展示物のなかには小中学校の備品類、当時のJR大槌駅ホームの掲示板など、沿岸12市町村の被害の実態がリアルに伝わります。国内外のTSUNAMI学習拠点として、ハワイ、インドネシアの津波博物館とWEBシンポなども行っています。
10年の追悼式を予定 道の駅で買い物も
「追悼の広場」から海に向かう道には献花台が置かれ、3月11日には、この場で岩手県と陸前高田市合同の追悼式が予定されています。
施設には「道の駅・高田松原」が併設され、三陸の「海の幸」を味わい、名産品の買い物もできます。大震災津波の実態を知り防災意識を高めるためにも訪れる価値があります。
見聞録メモ
開館時間:9時~17時
休館日:12月29日~翌年1月3日まで
入場無料
▲東日本大震災津波伝承館入口
▲津波でつぶれた消防車、気仙大橋の橋桁
▲被災した駅の看板や学校の備品を展示